少子化が進む中、いかに「魅力的な大学」として認知されるか。その鍵を握る大学研究分野のDXにおいて今、クラウドの推進が注目されている。この分野をリードする先進企業4社のスペシャリストに大学や研究機関におけるクラウドの現状と今後の展望について聞いた。
政府において「競争的研究費における各種事務手続き等に係る統一ルールについて」の改正が行われ、競争的研究費の直接経費からクラウド利用料の支出が可能であることが明確化された。具体的には、「府省共通経費取扱区分表」にクラウド利用料が明記されている。
このルール改正は、まだ一部の大学関係者にしか知られていない。これまで「クラウドに興味はあるが、競争的研究費を使って良いのか分からない」と二の足を踏んでいた教職員にとっては導入のハードルが一気に下がったといえるだろう。
しかし導入にはIT環境の分析や予算設定など「手続きが煩雑」という声も聞かれる。この点についてはどのような解決策があるのだろうか。
株式会社Fusicではクラウド導入サポートを強みにしている。同社でクラウド導入に関するコンサルティングやソリューション提案に携わる松延久美子氏は「予算立てやキャッシュフロー、必要な書類の準備といった調達手続きが一番のハードルになっている大学様が多いです。その手続きの部分を解消するためにはナレッジの蓄積があるベンダーがサポートさせていただくのが一番速くてスムーズですね」という。同社では国立情報学研究所が提供する、オープンサイエンスの考え方に基づいた研究データや関連資料を管理・共有するための研究データ管理サービスである「GakuNin RDM 」の利用支援も行っている。クラウド運用に不慣れな現場も多いが、操作面でのサポートやスタッフを派遣しての研修も可能だ。
クラウド導入サポートにはMEGAZONE株式会社も力を入れている。効率化とセキュリティを中心に見積や調達の手法、コスト最適化の具体的な方法などを全面的にサポート。同社営業統括本部マネージャー長谷川和利氏も「わずらわしいプロセスは全面的にコンサルティングします。手続きの大変さはほぼゼロになると自信をもっています」と胸を張る。
これまではシステムをオンプレミス型で構築し、共有サーバーなどを使うやり方が主流だった。しかしクラウドなら作業の効率が上がり、共同研究がしやすくなる。研究自体の質向上も大いに期待できるのだ。
「クラウドの強みは”速度”と”拡張性の高さ”です。クラウドを推進することは、すなわち教育DXを推進することなのです」と長谷川氏は強調する。MEGAZONEではメタバースプラットフォームの開発・運用も進めているという。
人手不足から業務に忙殺されている現場も多い。そんな中、学生や大学教職員のユーザーエクスペリエンスを向上し業務負担を軽減するのが、okta Japan株式会社が提供するモダナイゼーションだ。IDaaS領域に強みをもつ同社は、ユーザーがストレスなくアプリケーションを利用することにこだわりをもっている。
Okta Japanエンタープライズ営業本部の伊藤大氏は「多くの大学から、『オンプレミスで運用していた時と比べ、研究や他の作業に割ける時間もリソースも大幅に増えた』との声をいただいています」と語る。タイムパフォーマンスが大幅に向上しているのだという。
業務の効率化だけではない。シングルサインオンを用いた同社のシステムでは、学生側が簡単・安全に利用でき大学側としても情報漏えいを防ぐことのできる仕組みを構築している。そのことはユーザーの心理的安全性の担保につながるという。
伊藤氏は「クラウドサービスの認証基盤を構築することで、連携と導入のしやすさは格段に向上します。それが学びのDX化に繋がってくると思いますね」との考えを示した。
一方エクスジェン・ネットワークス株式会社が提供しているのはExtic(エクスティック)というクラウドサービスだ。これは学認との連携を可能とするものであり、学認IdPの構築に力を発揮する。「お客様からは、オンプレミス型では10日間を要した設定作業がExticだと半日で済んだと評価いただきました」と語るのはエクスジェン・ネットワークス開発本部の武井直孝氏だ。同氏によれば、認証基盤にクラウドサービスを導入することによって、認証機能における脆弱性の対応やメンテナンス作業が不要となるとのこと。「ID管理に精通していることから検証や課題解決にも積極的に支援が可能です。質問へのレスポンスが的確・迅速とのお声もいただいています」とサポートレベルの高さを強調した。250以上の大学研究機関が同社の製品を利用しているというのもうなずける。
4社に共通しているのは「大学の教職員や研究者の皆様が安心して研究に集中できる環境をできるだけ早く構築したい」という思いだ。クラウド運用によって研究が加速することはもちろん、導入サポートや業務効率化など、研究以外の仕事を減らすための支援にも各社それぞれの強みがある。
競争的研究費を利用したクラウドによる研究、学生エクスペリエンス向上、セキュリティ強化を実現する校務 DXなど業界大注目のトピックが満載の「教育と研究のDXフォーラム」(参加無料、申し込みはこちら)は、東京で8/24(木)、大阪で8/28(月)に開催される。この記事で紹介した4社による各講演をはじめ、理化学研究所計算科学研究センター センター長 松岡 聡氏によるバーチャル富岳に関する基調講演(東京会場)、「量子コンピューティングと量子ソフトウェアが実現する未来」と題し大阪大学 基礎工学研究科 教授 藤井 啓祐氏による基調講演(大阪会場)など大学研究分野における先端事例やベストプラクティスが数多く紹介される。
クラウド導入を検討している大学関係者の方には必見の内容となっている。
詳細、申し込みは下記より
https://www.kyobun.co.jp/event2023_edudx_summer/
東京会場 8月24日(木)
午前10時30分~午後5時
TKP新橋カンファレンスセンター
<大学・研究トラック>
■ご挨拶・登壇
10時30分~(オンライン登壇)
文部科学省 研究振興局 参事官(情報担当)嶋崎 政一
■基調講演
10時35分~11時15分
「バーチャル富岳が実現するサイエンスプラットフォームの広がり」
理化学研究所計算科学研究センター センター長 松岡 聡
■講演
11時20分~11時50分
「国際研究コラボレーションを指向したデータサイエンス教育の実現」
武蔵野大学 データサイエンス学部 学部長 教授 清木 康
■協賛社セッション
11時50分~12時20分
「オープンサイエンスを支えるクラウド認証基盤 Extic」
エクスジェン・ネットワークス株式会社
■講演
13時20分~13時50分
「クラウド活用で生物学の基礎研究を加速する」
自然科学研究機構基礎生物学研究所 進化ゲノミクス研究室 教授 重信 秀治
■協賛社セッション
13時50分~14時20分
「学術・研究機関におけるAWSクラウド活用事例~お支払い方法からGakuNin導入まで幅広くサポートします~」 株式会社Fusic
■協賛社セッション
14時20分~14時50分
「調達も運用も「安全」に ~大学・研究機関でのクラウド活用によるDXの
最初の一歩をお手伝いします~」MEGAZONE株式会社
■協賛社セッション
15時20分~15時50分
「教育DXを加速するID管理とアプリケーション管理のモダナイゼーション」 Okta Japan株式会社
■講演
15時50分~16時20分
「クラウドを活用した次世代型研究者データベースの開発と運用」
東北大学 工学研究科副研究科長・総長特別補佐 髙村 仁
■AWS講演
16時20分~16時50分
「生成系 AI の課題と解決策 - 学術・研究機関ユースケースからのAWSの考察」
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社
パブリックセクター技術統括本部 統括本部長 / プリンシパルソリューションアーキテクト
瀧澤 与一
大阪会場 8月28日(月)
午前10時30分~午後5時
大阪公立大学 中百舌鳥キャンパス
<大学・研究トラック>
■ご挨拶・登壇
10時30分~(オンライン登壇)
文部科学省 研究振興局 参事官(情報担当)嶋崎 政一
■基調講演
10時35分~11時15分
「量子コンピューティングと量子ソフトウェアが実現する未来」
大阪大学 基礎工学研究科 教授 藤井 啓祐
■講演
11時15分~11時45分
「関西学院が進めるDX ?「デジタル『に』トランスフォーメーション」からの脱却?」
関西学院 情報化推進機構 システム管理・情報セキュリティ担当課長補佐 北島 大助
■協賛社セッション
13時30分~14時00分
「教育DXを加速するID管理とアプリケーション管理のモダナイゼーション」
Okta Japan株式会社
■講演
13時15分~13時45分
「東海国立大学機構デジタルユニバーシティ構想」
名古屋大学 情報連携推進本部 情報戦略室 教授 青木 学聡
■協賛社セッション
13時45分~14時15分
「オープンサイエンスを支えるクラウド認証基盤 Extic」
エクスジェン・ネットワークス株式会社
■講演
14時15分~14時30分
「OCAにおける「産学連携による高度IT人材育成」
OCA大阪デザイン&テクノロジー専門学校
■協賛社セッション
15時15分~15時45分
「調達も運用も「安全」に ~大学・研究機関でのクラウド活用によるDXの最初の
一歩をお手伝いします~」MEGAZONE株式会社
■協賛社セッション
15時45分~16時15分
「学術・研究機関におけるAWSクラウド活用事例~お支払い方法からGakuNin導入まで幅広く
サポートします~」株式会社Fusic
■AWS講演
16時15分~16時45分
「生成系AIの課題と解決策-学術・研究機関ユースケースからのAWSの考察」
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社
パブリックセクター技術統括本部 統括本部長 / プリンシパルソリューションアーキテクト
瀧澤 与一
【主催・協賛】
主催: 株式会社教育新聞社 教育新聞ブランドスタジオ
特別協賛: アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
協賛:キヤノンITソリューションズ株式会社、エクスジェン・ネットワークス株式会社 、株式会社Fusic、コニカミノルタジャパン株式会社、ライフイズテック株式会社、MEGAZONE株式会社、Okta Japan株式会社
後援: 文部科学省、一般社団法人 ICT CONNECT 21、株式会社科学新聞社
【会場】
東京会場
TKP新橋カンファレンスセンター
〒100-0011東京都千代田区内幸町1-3-1幸ビルディング 16階
大阪会場
大阪公立大学 中百舌鳥キャンパス(B1棟)
〒599-8531 大阪府堺市中区学園町1番1号
【参加対象】
・小中高トラック:教育委員会の方々、教員の方々
・大学/研究トラック:大学関係者、研究室関係者
※お申し込み時に参加トラックをご選択ください。
【参加方法】
本サイトのお申し込みフォームから事前エントリーが必要です。参加費は無料です。