バーチャル富岳が見せる研究DXの未来 クラウドでサイエンスのプラットフォームに

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教育新聞ブランドスタジオ
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 世界最高峰のスーパーコンピュータ、「富岳」。

 その成果は私たちの生活にも大いに役立っている。線状降水帯の研究や飛沫・エアロゾル感染リスクシミュレーターなど、メディアを通じて見聞きしたことのある読者も多いのではないだろうか。

 この「富岳」にもっと多くの人がアクセスできるようにしようという試みが進行している。理化学研究所計算科学研究センター(以下、理研R-CCS)(兵庫県神戸市)はクラウドや国内外のスパコンセンターが富岳と同じ環境で利用できるようになる取り組みを行っている。この一環として「富岳」が生み出した成果であるソフトウェアなどをアマゾン ウェブ サービス(AWS)を通じても利用できるようにするため、AWSと共同で環境構築を行っているのだ。日本の科学技術発展に大きな貢献をするであろうこのプロジェクトは一体どのようなものなのか。「バーチャル富岳」によって、日本の科学教育にどんな変化が訪れるのだろう。

理研計算科学研究センターセンター長 松岡聡氏
理研計算科学研究センターセンター長 松岡聡氏

 2014年及び2022年にスーパーコンピュータ分野の2つの最高峰賞であるシドニー・ファーンバック賞とクレイ賞を世界で唯一両方受賞し、その後もスーパーコンピュータ開発のトップを走り続ける理研R-CCSの松岡聡センター長に聞いた。

バーチャル富岳が目指す「スパコンのPC化」

 「富岳」上にクラウド機能を実装し、リモートから操作できるインターフェースやアプリケーションサービスを実現する「富岳のクラウド利用」は富岳のサービス開始以前から進めてきた。

 しかし、今回大幅にそれと異なるのは、クラウドや国内外のスパコンセンターを富岳と同じ環境で利用できるようにすること、いわゆる「バーチャル富岳」を構築するという試みである。さらにこのバーチャル富岳の利用環境をデファクト・スタンダードとして広く普及させるために、国際的なコミュニティも構築していくという。

 「『富岳』は国が作ったスーパーコンピュータです。環境はもちろんのこと、利用環境のソフトウェアや、多くの社会的成果をもたらすアプリもリソースを注ぎ込んで作っています。今までできなかったサイエンスが実現できる機能を、広くかつ簡便に使えないのは、もったいないと考えました。」と松岡センター長は言う。富岳の利用環境が商業クラウド上等でも、面倒なソフトウェア環境の構築や運用をせずに、簡単に直接利用できるようになるのは、非常に画期的なことではないだろうか。

 AWSクラウドの仮想サーバー(Amazon Elastic Compute Cloud)上では、『富岳』で作ったソフトウェアやアプリケーションが高い性能で使えることが、すでにR-CCSとAWSが協力して示している。「場合によってはAWSのCPUの方が速く動くアプリケーションもあるくらいです」と松岡センター長は太鼓判を押す。AWSの技術力も相まって、「富岳」のリッチな環境をクラウド上で使うことが可能になったのだという。バーチャル富岳が目指しているのは、ひとことで言えば「スパコンのPC化」だ。WindowsなどのOS(オペレーティングシステム)が入った普通のPCををイメージすると分かりやすいだろう。購入後すぐに起動し、表計算ソフトや文書作成ソフトなど元々入っているアプリケーションがあればすぐ使うことができる。「バーチャル富岳」もそれと近いことを実現しようとしているのだという。

 これまでのスーパーコンピュータでは、機種ごとにインストールされているソフトが異なったり、場合によってはOS自体が違ったりしていた。また従来の「富岳」上でアプリケーションを動かすには、端末上でコマンドをタイプしなければならなかった。「バーチャル富岳ではブラウザ経由のインターフェースを実現しました。アイコンをクリックすれば動く環境を構築し標準化しようとしているのです」

 PCと同じようにメニューやアプリケーションが並んでいる画面なら、スーパーコンピュータに不慣れなユーザーでも操作へのハードルは下がる。見た目はPC画面のようでいて、実は裏で「富岳」が動いている。計算、ビジュアライザー、データ処理などのソフトウェアが非常に高いレベルで使用できるのだ。たとえば高度な分子の計算ができ、その結果はビジュアライザーによってきれいに視覚化できる。

 バーチャル富岳によって「富岳」の利用環境が「富岳」というハードウェアを超えて、クラウドや他のスパコンが同じようになって、結果として「富岳」自身の利用にも弾みがつく。例えば、企業が企業が商品開発で「富岳」を利用する場合、制度として「富岳」の利用には制限があった。この点についても「バーチャル富岳」は有利だ。例えば「バーチャル富岳」をAWS上の仮想スーパーコンピュータとすることによって、「富岳」の利用制度のルールに縛られずに動かすことができるのだという。これによって、研究開発段階ではそのためのシミュレーションを「富岳」を利用し、製品化の段階ではAWS上の「バーチャル富岳」上で何ら移植を伴わず利用する、といったことができるようになる。

富岳画面
富岳画面

世界最高峰のスーパーコンピュータがみんなのものに

 「誰でもスパコンを気軽に、同じ環境で使える」ことにより、「バーチャル富岳」は私たちに画期的な恩恵をもたらす。

 「高度な計算と誰でも親密に付き合えるようになります。つまり『あなたのプライベート「富岳」ができますよ』ということなのです」。

 「富岳」が有名になったことでだいぶ払拭されたものの、スーパーコンピュータというと「エリートのためのマシン」というイメージが先行し、敷居の高さを感じる向きも多い。しかし松岡センター長は「高校生や大学生、大学院生そして社会人と、あまねく人にこの環境を享受してほしい」と言う。「バーチャル富岳」に触れ使い方に慣れていれば、いつか「富岳」の本体を使う機会が訪れた時にもスムーズに操作することができる。普通の高校生であっても「バーチャル富岳」を使って学ぶことができるというのは、一昔前には考えられなかったことだろう。

 PCでも高度な計算をしようと思えば、できないことはなかった。しかしその環境をPC上に構築するのは大変なことだ。処理速度も遅い。PCのCPUが通常は1個であるのに比べ、スーパーコンピュータのCPUは16万個。桁違いの性能だ。

 「『富岳』は『使ってなんぼ』です。「富岳」ユーザーや潜在ユーザーがより「富岳」技術の成果を享受できるようになれば、世界最高の計算能力を広く社会に、そして世界に波及させることができます。そのことが最先端の研究開発や社会課題解決、産業利用への貢献につながると考えています」と強調する。

 「バーチャル富岳」の出現は私たちの暮らしに社会基盤としての「富岳」の成果をもたらす。それは現実空間と仮想空間とを融合させ、経済発展と社会的課題の両方を解決する「Society5.0」の実現にもつながることなのだ。

 環境・食料問題や少子高齢化など、人類は多くの問題を抱えている。それらの課題や困難を克服するための研究が、この「バーチャル富岳」で実現する可能性を感じる。

「スパコンに興味はあるけれど……」そんな人こそ参加してほしい「教育と研究のDXフォーラム」

 「バーチャル富岳」は、クラウドを通じて人々をスーパーコンピュータの世界に引き入れるのにも役立つ。「富岳」は世界一のスーパーコンピュータであることから、「普通の人には手の届かないもの」と捉えられがちだ。しかし松岡センター長によれば、「高い性能だけが『富岳』の特徴ではありません。汎用性を両立している、結果としてクラウド上で『バーチャル富岳』として仮想化できることが『富岳』の独自性なのです」という。

 「富岳」という名のとおり、「最初は『バーチャル富岳』をクラウド利用してみよう」「研究に欠かせない存在になったら、『富岳』本体の利用も検討しよう」と山を登るがごとく自分の研究のステップに応じて使うことができるのだ。

 小・中・高校と大学の教育&研究DXの課題解決を探る「教育と研究のDXフォーラム」(参加無料、申し込みはこちら)が注目を集めている。東京会場(8/24開催)では、松岡センター長による基調講演「バーチャル富岳が実現するサイエンスプラットフォームの広がり」が行われる。

 「『スーパーコンピュータに興味はあるけれど、使い方が分からない』という人にこそ、この講演を聞いてほしい」と松岡センター長は言う。「スパコンはハードルが高い、遠い存在だ……『バーチャル富岳』はそんなイメージを解消します。利用料を払えば使えますし、使い勝手はPCと変わらないのです」。

 「教育と研究のDXフォーラム」は8月24日に東京会場にて、8月28日に大阪会場にて開催。松岡センター長の基調講演では、バーチャル富岳の詳細や最新の情報を知ることができる。他にも大阪大学 基礎工学研究科藤井啓祐教授による基調講演「量子コンピューティングと量子ソフトウェアが実現する未来」、業界をリードする各社によるクラウドや生成系AIの活用事例など、他では知ることのできない教育DXの「いま」を知るのに最適のイベントとなっている。

「教育と研究のDXフォーラム」

詳細、申し込みは下記より
https://www.kyobun.co.jp/event2023_edudx_summer/

東京会場 8月24日(木)
午前10時30分~午後5時
TKP新橋カンファレンスセンター

【大学・研究トラック】

■ご挨拶・登壇
10時30分~
文部科学省 研究振興局 参事官(情報担当)嶋崎 政一

■基調講演
10時35分~11時15分
「バーチャル富岳が実現するサイエンスプラットフォームの広がり」
理化学研究所計算科学研究センター センター長 松岡 聡

■講演
11時20分~11時50分
「国際研究コラボレーションを指向したデータサイエンス教育の実現」
武蔵野大学 データサイエンス学部 学部長 教授  清木 康

■協賛社セッション
11時50分~12時20分
「オープンサイエンスを支えるクラウド認証基盤 Extic」
エクスジェン・ネットワークス株式会社

■講演
13時20分~13時50分
「クラウド活用で生物学の基礎研究を加速する」
自然科学研究機構基礎生物学研究所 進化ゲノミクス研究室 教授  重信 秀治

■協賛社セッション
13時50分~14時20分
「学術・研究機関におけるAWSクラウド活用事例~お支払い方法からGakuNin導入まで幅広くサポートします~」 株式会社Fusic 

■協賛社セッション
14時20分~14時50分
「調達も運用も「安全」に ~大学・研究機関でのクラウド活用によるDXの
最初の一歩をお手伝いします~」MEGAZONE株式会社 

■協賛社セッション
15時20分~15時50分
「教育DXを加速するID管理とアプリケーション管理のモダナイゼーション」 Okta Japan株式会社

■講演
15時50分~16時20分
「クラウドを活用した次世代型研究者データベースの開発と運用」
東北大学 工学研究科副研究科長・総長特別補佐 髙村 仁

■AWS講演
16時20分~16時50分
「生成系 AI の課題と解決策 –学術・研究機関ユースケースからのAWSの考察」
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社
パブリックセクター技術統括本部 統括本部長 / プリンシパルソリューションアーキテクト 
瀧澤 与一

大阪会場 8月28日(月)
午前10時30分~午後5時
大阪公立大学 中百舌鳥キャンパス

【大学・研究トラック】

■ご挨拶・登壇
10時30分~(オンライン登壇)
文部科学省 研究振興局 参事官(情報担当)嶋崎 政一

■基調講演
10時35分~11時15分
「量子コンピューティングと量子ソフトウェアが実現する未来」
大阪大学 基礎工学研究科 教授 藤井 啓祐

■講演
11時15分~11時45分
「関西学院が進めるDX ~「デジタル『に』トランスフォーメーション」からの脱却~」
関西学院 情報化推進機構 システム管理・情報セキュリティ担当課長補佐  北島 大助

■協賛社セッション
13時30分~14時00分
「教育DXを加速するID管理とアプリケーション管理のモダナイゼーション」
Okta Japan株式会社

■講演
13時15分~13時45分
「東海国立大学機構デジタルユニバーシティ構想」
名古屋大学 情報連携推進本部 情報戦略室 教授 青木 学聡

■協賛社セッション
13時45分~14時15分
「オープンサイエンスを支えるクラウド認証基盤 Extic」
エクスジェン・ネットワークス株式会社

■講演
14時15分~14時30分
「OCAにおける「産学連携による高度IT人材育成」
OCA大阪デザイン&テクノロジー専門学校

■協賛社セッション
15時15分~15時45分
「調達も運用も「安全」に ~大学・研究機関でのクラウド活用によるDXの最初の
一歩をお手伝いします~」MEGAZONE株式会社

■協賛社セッション
15時45分~16時15分
「学術・研究機関におけるAWSクラウド活用事例~お支払い方法からGakuNin導入まで幅広く
サポートします~」株式会社Fusic

■AWS講演
16時15分~16時45分
「生成系AIの課題と解決策-学術・研究機関ユースケースからのAWSの考察」
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社
パブリックセクター技術統括本部 統括本部長 / プリンシパルソリューションアーキテクト 
瀧澤 与一

【主催・協賛】
主催: 株式会社教育新聞社 教育新聞ブランドスタジオ
特別協賛: アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
協賛:キヤノンITソリューションズ株式会社、エクスジェン・ネットワークス株式会社 、株式会社Fusic、コニカミノルタジャパン株式会社、ライフイズテック株式会社、MEGAZONE株式会社、Okta Japan株式会社
後援: 文部科学省、一般社団法人 ICT CONNECT 21、株式会社科学新聞社

【会場】
東京会場 
TKP新橋カンファレンスセンター
〒100-0011東京都千代田区内幸町1-3-1幸ビルディング 16階

大阪会場
大阪公立大学 中百舌鳥キャンパス(B1棟)
〒599-8531 大阪府堺市中区学園町1番1号

【参加対象】
・小中高トラック:教育委員会の方々、教員の方々
・大学/研究トラック:大学関係者、研究室関係者
※お申し込み時に参加トラックをご選択ください。

【参加方法】
本サイトのお申し込みフォームから事前エントリーが必要です。参加費は無料です。