2021年1月に出された中教審答申で、教師に求められる能力・資質の一つとしてファシリテーション能力が示された。人々の活動が容易にできるように支援・舵取りする能力として、近年耳にする機会が増えたファシリテーション能力を学校現場で生かすためのノウハウが詰まったガイドブック。
全3章で構成されており、第1章はファシリテーションとはどういう能力なのかを深掘り。ビジネスシーンから広がり始めたファシリテーションという能力を学級経営にどのように応用していくのかを、学級内の良好なコミュニケーションを促す「ファシリテーション6つの技術」を交えながら紹介。教師だけではなく、子どものファシリテーション能力を高める方法論も提案されている。
第2章では、第1章で触れた技術の実践例を示す。始業式やアサガオの観察、クラス対抗長縄大会など、さまざまなシチュエーションにおける子どもへの声の掛け方を述べる。各シチュエーションでの適切なセリフが失敗例と一緒に載っているため、子どもの健やかな成長を手助けする接し方を身に付けられるだろう。
小学校教師を務める執筆者全員が参加した座談会が収録された第3章も読み応え十分。ファシリテーション技術を学級経営に活用する中で感じられた葛藤や手応えが語られており、現場目線での実態を知ることができる。読み終わった後には、子どもとの関わり方をアップデートできる良書だ。