弘前大学教育学部専任講師
これまで、アニメ動画「ポリポリ村のみんしゅしゅぎ」を用いた出前授業についてお話ししてきましたが、今後はこれを海外、特に途上国に広げていきたいと考えています。民主主義は時間も労力も経済的コストもかかりますが、「みんなで決める」という意思決定の正統性やその過程の透明性等を考えれば、少なくとも一部の人間が意思決定を独占する独裁制や権威主義体制よりも、望ましい政治体制であるとの結論に至るのは必然です。
主権者教育は、必然的に、教育の現場で政治を扱うことを意味します。しかし、日本の教育においてはいまだに、政治はある種タブー視される傾向にあります。
「ポリポリ村のみんしゅしゅぎ」を使った出前授業は、2021年2月現在までに、18の小学校で25回実施しました。地域や学年によって少しずつ児童への問い掛けや議論の仕方等を変えていますが、一方で、共通して守っていること、気を付けていることもあります。
児童たちの反応をさらに詳しく見るため、文字を対象とした分析手法である「テキストマイニング」を使います。ここでは、データ項目間の関係性を視覚的に理解する手法である「対応分析」を行ってみます。
授業の前後では、児童の意識の変化を捉えるべく、簡単なアンケート(事前・事後で同じ内容)を行っています。事前アンケートは授業の1週間程度前に、事後アンケートは授業の最後に、それぞれ記入してもらいます。
筆者が行う出前授業は、以下のような流れで行います。最初に、この授業では「選挙」についてアニメ動画で学ぶこと、動画はポリポリ村という村の村長選挙が舞台であり、本日村長を投票で決めるのは児童自身であること等を説明します。「選挙」は偉い人を選ぶことだと思っている児童が多いようですが、例えば「明日の給食のメニューをクラスで一つ決めるとしたら、その時にも選挙は使えるんだよ」といったように、選挙とは私たちの生活に身近なものであることを強調します。
筆者が行う主権者教育の出前授業では、アニメ動画を教材として使用します。タイトルは「ポリポリ村のみんしゅしゅぎ」で、3部(A、B、C)に分かれています。子供たちがAを観た後に投票し、その結果によってその後のストーリーがB、Cのどちらかに決まるといった具合に、模擬投票によって物語が分岐する仕掛けになっています。ストーリーの概要は、以下の通りです。
「18歳選挙権」を受け、2017(平成29)年告示の新たな学習指導要領は、全体として主権者教育をより促進するものとなっています。最も分かりやすいのは順番です。従来、小学校社会科第6学年の指導内容は、歴史⇒政治⇒国際の順で記述されていましたが、新たな学習指導要領では、政治⇒歴史⇒国際の順になり、各教科書もそれに倣って同様の順番となりました。
主権者教育はわが国に浸透しつつありますが、一方で、それが行われる場は圧倒的に高校が多くなっています。例えば、総務省の調査では、2015年度における主権者教育の出前授業は、高校では実施校数1652校・受講者数45万3834人であったのに対し、中学校では335校・6万5400人、小学校では575校・4万1603人にとどまっていました(総務省「『主権者教育の推進に関する有識者会議』とりまとめ」より)。
2015年の公職選挙法改正で選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられて以降、いわゆる「主権者教育」が全国的に浸透しつつあります。この連載では、主権者教育の意義や目的を踏まえた上で、筆者が小学生向けに行っている具体的な取り組みについて紹介します。
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