理化学研究所経営企画部長・デジタル庁アドバイザー
本連載ではこれまで、デジタル庁が示すロードマップの内容を順に紹介してきた。これらを通じ、教育DXのデジタライゼーション、つまりICTをフル活用して学習者主体の教育への転換や教職員が子供たちと向き合う環境に向かって進むこととなる。ロードマップでは国の関連施策の2025年度までの行程表も付けており、産学官あらゆる関係者にとって今後の進展の道しるべとなるものである。
社会全体でデジタル化を進める中、デジタル庁にふさわしい視点は、教育データの学校外との連携である。その一つが、ロードマップで示されている生涯にわたる学びの成果の可視化である。
これまで紹介してきたデジタル庁のロードマップの内容は、流通、プラットフォーム、環境整備などデータ利活用に必要な全体のシステムが中心であった。同じく必要となるのが、そのデータを実際に使う利用者側に立ったルールやポリシーである。
ネットワークや端末などのデータ利活用に必要な環境の整備は、2019年度補正予算から始まった「GIGAスクール構想」による国から自治体などへの補助で、大きく整備が進むこととなった。しかしながら、学校や教育委員会にはICTに関する知見が不足しており、急な環境整備にそもそも何を整備したらよいかも見えない状況であった。
教育のデータを円滑に利活用するために考えられているのが、「プラットフォーム」である。教育のデジタル化のミッションである「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる」を実現するために、データを有効に活用できるようにした場のことである。
本連載ではこれまで、アーキテクチャに基づくデータのやりとりについて見てきたが、そもそも教育データとはどういうものなのか。 デジタル庁のロードマップでは、文科省有識者会議での議論も踏まえ、教育データの全体像を示そうとしている。
本連載ではこれまで、教育DXにはデータ利活用が要であることについて触れてきたが、実際にデータを利活用するためにはさまざまな事項が複雑に絡み合っているため、まずは全体をいったん整理するのが分かりやすい。そこで、階層化という手法を用いて取りあえず整理してみたのが、デジタル庁のロードマップにある、初中教育と高等教育の「アーキテクチャ」という図である。
デジタル庁が示した教育データ利活用ロードマップでは、いつ何ができるようになるかを、2022年までの「短期」、25年ごろまでの「中期」、30年ごろまでの「長期」に分けて具体的に示している。
教育現場には、ICT環境整備が終わったと思ったら、次から次へとICT利活用施策が打ち出され、困惑しているところもあると聞く。デジタル化は段階を踏んで進むものだが、この段階が見えていないと目先のやることに追われ、デジタル化の便利さが実感できない。
「GIGAスクール構想」の下で、学校現場のデジタル化が急速に進んでいる。教師と児童生徒との距離が近くなり、子供たちの学習への興味・関心や理解が見違えるほど進んだといったうれしい事例も多く聞くようになった。一方で、何をするか試行錯誤が続く現場もあれば、使い方さえ分からず、子供たちが取り残されている現場の話も聞く。
広告ブロック機能を検知しました。
このサイトを利用するには、広告ブロック機能(ブラウザの機能拡張等)を無効にしてページを再読み込みしてください