現在、全国学力テストは対象学年全員を対象に、全員が全く同じテストを受験する悉皆調査で実施されています。日本全体の学力を把握するだけなら、数千人を標本抽出すれば十分なのですが、全ての教育委員会や学校において「指導改善に利用する」という理由で、この実施方法が正当化されてきました。
全国学力テストを使うことで、日本の教育実態や政策の効果を知ることを望む人は少なくありません。かくいう私もその一人です。ただ、現在の全国学力テストでは、教育の実態を知ることも、政策の効果を測ることも簡単ではありません。
全国学力テストが開始された理由の一つに、21世紀初頭の学力低下論争があります。当時、いわゆる「ゆとり教育」の実施に伴い、日本の学力が低下しているのではないかという懸念が世間を騒がせていました。折しも2000年から03年にかけて国際学力調査PISAの日本の順位が急落したこともあって、学力低下は決定的な事実として受け止められるようになったのです。
文部科学省が実施する全国学力・学習状況調査(以下、この連載では「全国学力テスト」と呼びます)が2007年に始まって、10年を超える月日が流れました。 初めに言っておきますが、全国学力テストは失敗しています。このテストには、当初さまざまな目的が与えられてきました。ある人は、テストを通した点数競争によって日本の学力を向上させたいと考えていました。
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