子どもの自殺の多くは、「原因が分からない」ものである。遺書が残っていないことや自殺をほのめかす言動がないこと、家庭環境に問題がないことも多々ある。自殺の原因は一つではなく、その子自身の個別の問題、家庭の問題、学校の問題などさまざまな要因が重なっている。
日本は教育・医療・福祉の制度が整っており、世界の中でも裕福な国の一つである。ユニセフの子どもの幸福度調査によると、先進国38カ国の中で、日本の子どもの幸福度は20位となっている。詳細を見ると、「身体的健康度」は世界で一番良い状態であった。身体的健康度は子どもの死亡率と肥満度が指標となっている。
コロナ禍における若者の自殺の急増について、厚生労働大臣指定法人いのち支える自殺対策推進センター(以下、自殺対策推進センター)は、「著名人の自殺及び自殺報道の影響」をその要因として挙げている。自殺報道の影響を「ウェルテル効果」と言う。自殺が大きく報道されたり、自殺の記事が手に入りやすかったりする地域ほど自殺率が高く、その影響は若年層が受けやすいことが分かっている。
2006年に自殺対策基本法が制定され、それまで「個人の問題」とされていた自殺を「社会の問題」と捉えた取り組みがなされ、3万人台だった自殺者数が2万人台に減少した。これらの自殺対策は一定の効果があったと評価できる。一方で、我が国の自殺対策は中高年男性を中心に進められ、女性と若者・子どもの自殺対策は後回しにされてきた。
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