学校司書と学校全体が協働 図書館活用アドバイザーの支援で 「楽しい」授業を心掛ける 三重県亀山市教育委員会

学校図書館特集【協賛企画】2024
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「都道府県調べ」の小学4年生の授業の様子

 亀山市では、2013年度から全14校(中学校3校、小学校11校)に段階的に学校司書が配置され、学校規模に応じて週1~3回勤務している。17年度には教育委員会に学校図書館活用アドバイザーの役職を設け、教員経験者を充て、学校図書館の支援を進めてきた。

 アドバイザーは、全小中学校を月に1~2回訪問し、図書館活用授業を行うとともに、学校司書や図書館担当教員への支援をしている。午前中3時間で授業をし、残り1時間で打ち合わせや支援を行う。年間6回の学校司書会や各校の図書館担当者が集まる学校図書館情報協議会にも参加する。年間計画に沿った活用授業は、学ぶことが楽しい、読書は楽しい、と感じられる「楽しい」授業であることを心掛けている。

 4月には、全ての学級で学校司書が中心になって図書館オリエンテーションを行う。オリエンテーションは、年間を通じた利用促進のための大事な時間であり、司書会でその流れやプリントを共有している。

2023年度学校図書館活用アドバイザーの年間活動内容
2023年度学校図書館活用アドバイザーの年間活動内容

 1学期は、小学校3年生以上に読書感想文の書き方の授業をする。本選びや書き方や構想メモの作り方を指導し、課題図書の紹介もする。小学校2年生には、7月に教科書単元と合わせて、自分のお気に入りの本を紹介し合い、感想文を書く2学期の担任指導へとつなげている。感想文指導は、この時期だけの指導にとどまらず、年間を通じて読書に親しみ、自分の思いを文章化する活動を積み重ねていくことが大切だと考えている。

 2学期以降には、「百科事典の使い方」(小学校3年生)、「学習年鑑の使い方」(小学校5年生)など、本を使った調べ学習の方法を学び、調べることの楽しさを体験する。子どもたちからは「この本便利!」「自主学習にピッタリや」との声が上がる。都道府県調べ(小学校4年生)、世界の国調べ(小学校6年生)、歴史人物調べ(中学校2年生)など、本を中心にした調べ学習をその後も何度か繰り返し、情報活用能力の育成を図っている。

 絵本から読み物へのステップアップがスムーズにできるように、多くの幼年童話の試し読みをする「味見読書」の授業も行う。2分ごとに次々と本の「味見」を繰り返し、続きを読んでみたい本の交流をする。本はそのまま学級へ貸し出す。「文字の少ない絵本」「科学読み物」「伝記」「短編集」など、狙いに応じた本を学校司書に抜き出してもらうことで、さまざまな学年での味見読書もできる。

 読む力を育てるために、みんなが同じ話を読む「集団読書」(小学校4年生・中学校1年生)の授業も取り入れている。少し読んだところで場所や時、登場人物を全員で確認し、そのあとの展開を予想し、最後まで読む。「集団読書の後は、字の小さな本も読めるようになったよ」とうれしそうに話してくれる子もいて、授業の中で読む練習をする必要性を感じる。

 中学校では「蜘蛛の糸」を読んで一問一答に答えてもらい、答えの根拠となる記述を確かめる。学校司書には、作者である芥川龍之介のブックトークや図書館のコーナー設置もお願いし、各自の読書へとつなげている。

 教科書教材に関連した「新見南吉」「椋鳩十」「斎藤隆介」に関する授業では、作者について学んだり、単元の狙いに沿って作品を読んだりする。作者の思いや話の内容を紹介すると興味を示し、読書のきっかけとなることが多い。

 また、各校が2~3紙購読している新聞を生かして、「ミニ切り抜き新聞」(小学校5年生~中学生)の授業も行う。小さめのニュース記事を選んで画用紙中央に貼り、5W1Hを読み取って周りに吹き出しで書く。自分なりの見出しを付けて、感想を添え「ミニ切り抜き新聞」として仕上げる授業である。新聞記事という初見の文章を読み取り、見出しを付けることで要約を考え、自分なりの感想や考えを表現することができる。授業後も定期的に継続して取り組む教員や、自主学習に取り入れる子どもも現れた。

 その他にも、「ビブリオバトルをしよう」や「本の紹介POPをかこう」など、読書を楽しむだけでなく、それを伝える喜びを味わう授業も行う。作成した「ミニ切り抜き新聞」や「本の紹介POP」は、市立図書館でも展示するなど、連携も進んできた。

 図書館活用は、子どもたちへの活用授業の実施とともに、教員に学校図書館の機能を理解して活用の有効性を感じてもらうことが、鍵だと考えている。そのため、研修会やワークショップも行い、実態に合わせて授業ができるように、活動の流れを提供している。

 学校図書館という、今ある大きな資源を生かし、専門性を持った学校司書と協働して、学校全体で図書館活用を積極的に進めていけるように、これからも活動していきたい。

 (亀山市教育委員会 学校図書館活用アドバイザー・川口恭子)