一人一人に寄り添う工夫を 個人に合わせた資料作り 読書バリアフリーを進める 沖縄県立沖縄盲学校

学校図書館特集【協賛企画】2024
協賛各社
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拡大読書器

はじめに

 本校は、1921年に沖縄県に創設された県内唯一の視覚支援学校である。現在、幼稚部、小学部、中学部、高等部普通科、専攻科に45人の幼児、児童、生徒が在籍している。専攻科とは、高等学校の卒業資格のある方があん摩、マッサージ指圧師、鍼灸師の免許取得を目指す生徒で本校高等部普通科の卒業生や中途視覚障害の方が入学する。

 また、視覚障害以外の障害を併せ持っている幼児、児童、生徒も在籍し、年齢層は、3歳から60代と幅広くなっている。

一人一人の見え方に応じた読書

 一言に視覚障害といっても、全盲、弱視など見え方は個人によってさまざまであり、点字、拡大本、デイジー図書など一人一人に合わせた資料作りが図書館の大きな役割となっている。視覚障害は、読書をする際の障害とならないように、読書のバリアフリーに努めている。

 また、幼児、児童、生徒だけではなく保護者や教職員への貸し出しも行っており、視覚障害やその他の障害に関する本や専攻科で必要な医学に関する本も揃えている。蔵書冊数は、9567冊(内、点字図書3532冊、拡大図書761冊)録音図書1028枚、手作り障る絵本119冊となっている。

 視覚障害の幼児、児童、生徒に適した読書環境を整えるため、読書補助機器として、「拡大読書器」「よむべえスマイル」「音声ソフトPC」「サピエ図書館」「対面朗読室」を設置し、それぞれの読書を支えている。

 本校図書館の蔵書は大きく分けて、墨字本(活字印刷された市販の一般図書)、点字図書、拡大図書、録音図書、さわる絵本から成り立っている。

読書を支えるボランティア

実物に触れることのできる戦争遺留品の展示
実物に触れることのできる戦争遺留品の展示

 本校には、読書活動を支えるため、さまざまなボランティアの方が関わっている。本校の図書館を主に支えてくれているボランティア団体は、「点訳ボランティア」「さわる絵本部」「拡大本ボランティア」である。この3つの団体は、それぞれ沖縄盲学校を退職した職員が、退職後に立ち上げた団体で、40年以上も活動している団体もある。

 まず、「さわる絵本部」は、さわることによって、物を認知し、絵本を楽しむことができるように工夫した手作りの半立体的な絵本作りをしている。さわる絵本にふれた子どもたちの様子として、「さわることを恐れなくなり、積極的に物をさわろう、分かろうとする態度が芽生えてきた」「点字指導への導入が容易になった」などの効果が現れている。

 さわる絵本に慣れてきた子どもたちが、小学校入学後に、点字を学び、「点訳ボランティア」により、点訳していただいた「点訳絵本」を読むようになる。

 点訳絵本とは、透明なタックペーパーに点字を打ち、それを絵本の上に貼り付けたものである。点訳絵本は、一人でも読むことができ、点字を読めない保護者も、墨字を見ながら、読み聞かせすることができる。その後、絵本から、物語、授業で使う関連本、趣味の本を、自らの手で、選び、読むようになっていく。その際に、「点訳ボランティア」が、子どもたちのリクエストに応じて、点訳してくれる。活動日が、毎週水曜日、校内で行われているので、連携が取りやすい。

 最近では、SNSで、読書好きの友だちを作り、お互いに、おすすめ本の紹介をして、読書を楽しんでいる子どもたちもいる。その子どもたちは、図書館にない本は、サピエ図書館で検索し、点訳データで読書をしている。また、図書館にも、サピエ図書館にもない本に関しては、図書館を通じ、点訳ボランティアに点訳を依頼している。

本校ならではの取り組み

平和資料展の様子
平和資料展の様子

 毎年4月に、図書館だよりで新職員の「氏名、好きなこと、好きな本」などを紹介しており、新職員の声を録音したものをCDで配布し、幼児、児童、生徒が新職員について知り、認識するために、一役買っている。

 沖縄では、6月23日が沖縄戦・慰霊の日と定められ、図書館でも6月は、平和月間としている。近隣の文化センターより、戦争遺留品を借用して、実物を触ることができるようにしている。  

 平和の絵本の読み聞かせをする中で、動物の鳴き声や様子を表す音声を入れたり、月桃の花を触ったり、香りを嗅いだりする活動を取り入れ、より理解を深め、楽しむことができるようにした。

 沖縄盲学校では、点字導入前の幼児、児童、生徒から、自分で本を探し読んでいる幼児、児童、生徒まで、幅広く在学している。ボランティアと協力しながら、読む前のサポートから、読みたい本を、点訳本、拡大本、デイジー図書に変えて、つなげるサポートまで、一貫して行っている。今後も、成長段階や見え方の状況に合わせた、一人一人に寄り添った読書活動推進をしながら、読書バリアフリーを進めていく予定である。

 (前沖縄県立沖縄盲学校校長・内間秀樹)