文部科学省より、「養護教諭及び栄養教諭の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則の参考例等の送付について」(2023年7月5日)を通知した。23年1月17日に公表された「養護教諭及び栄養教諭の資質能力の向上に関する調査研究協力者会議の議論の取りまとめ」を踏まえ、「養護教諭及び栄養教諭の標準的な職務の明確化を図るための小学校及び中学校(義務教育学校を含む)に係る学校管理規則の参考例」「養護教諭及び栄養教諭の標準的な職務の内容及びその例並びに職務の遂行に関する要綱の参考例」を作成し、その留意事項などと併せて通知している。栄養教諭がその専門性を発揮し本来の職務に集中できるような環境を整備していただくよう、通知において依頼している。
ところで、栄養教諭制度は、児童生徒の食生活の乱れが深刻化する中、学校における食に関する指導を充実し、児童生徒が望ましい食習慣を身に付けることができるよう、05年4月から新たに開始された。栄養教諭は、学校における食育の推進に中核的な役割を担い、給食管理のみを本務とする学校栄養職員とは、職務内容や職務上の責任、必要な資質が異なる新たな職である。
栄養教諭は、食に関する指導と学校給食の管理を一体のものとして行うことにより、教育上の高い相乗効果をもたらすことが期待されている。なお、栄養教諭とは、管理栄養士または栄養士の免許を有しており、栄養に関する専門性と教育に関する資質を併せ有する教師である。つまり、基礎免許として、管理栄養士などの免許を有していることが特徴とも言える。栄養教諭の職務については、学校教育法において、幼児、児童、生徒の栄養の指導及び管理をつかさどるとされている。栄養教諭の職務内容について、これまでも周知してきているが、議論の取りまとめの中で、次のことが指摘されている。
「栄養教諭について、学校栄養職員が主として学校給食の管理を担うのに対し、食に関する指導と学校給食の管理を一体のものとして行うことを本来の役割としているものの、現状、学校給食の管理に関する業務に比重が置かれ、栄養教諭としての本来の役割を果たせていないのではないか」「学校給食の管理は、食に関する指導と並ぶ、栄養教諭の職務の柱の一つとなるが、本来、学校給食の管理に含まれない業務まで、栄養教諭に委ねられているのではないか」。
そこで、通知に添付している「栄養教諭の標準的な職務の内容及びその例」を基に、改めて栄養教諭の職務を整理したい。
「栄養教諭の標準的な職務の内容及びその例」では、「主として食育に関すること」と「主として学校給食の管理に関すること」に区分して整理している。「主として食育に関すること」の職務の内容は、「各教科等における指導に関すること」と「食に関する健康課題の相談指導に関すること」である。「各教科等における指導に関すること」の職務の内容例としては、「食に関する指導の全体計画の作成」「給食の時間における児童生徒への給食指導及び食に関する指導」、上記のほか、「各教科等における食に関する指導への参画(ティーム・ティーチング、教材作成等)」が挙げられる。「食に関する健康課題の相談指導に関すること」の職務の内容例としては、「食に関する健康課題を有する児童生徒への個別的な相談指導(実態把握、相談指導計画の作成、実施、評価等)」が挙げられる。
「主として学校給食の管理に関すること」の職務の内容は、「栄養管理に関すること」と「衛生管理に関すること」である。「栄養管理に関すること」の職務の内容例としては、「学校給食実施基準に基づく栄養管理(献立作成、栄養摂取状況の把握)」が挙げられる。「衛生管理に関すること」の職務の内容例としては、「学校給食衛生管理基準に基づく衛生管理(学校給食施設及び設備の衛生、食品の衛生並びに学校給食調理員の衛生の管理、学級担任等や学校給食調理員への指導・助言)」が挙げられる。議論の取りまとめで指摘されているように、栄養教諭が、献立作成を越えて、食材の調達に係る契約手続きや、学校給食の調理そのものまでを担っている場合には、これらの業務は、栄養「教諭」の本務としては必ずしも適切ではないため、見直しを行うことが望まれる。栄養教諭には、栄養教諭が実施すべき業務を行うこと、教育委員会や学校関係者には、栄養教諭の職務の認識を再共有することが求められる。