株式会社教育と探求社 代表取締役社長
前回から続くデンマーク教育視察、今回は自由高校だ。自由高校は、首都コペンハーゲンにある非常に個性的な私立学校である。まず驚くのはその建物。外壁、内壁、天井まで落書きで塗り込められている。まるで危険なエリアに踏み込んだのではないかと錯覚しそうになる。壁には政治的なメッセージを書いたステッカーも貼ってある。
数年前、教育視察でデンマークを訪れた。未来教育会議(miraikk.jp)という企業人や教育関係者から成るコンソーシアムで、現地の幼稚園、小学校、高校、教員養成大学、その他の施設を訪問した。そこで見たものはどれも、学習者を真ん中に置いた素晴らしい学びの場だった。私は、クエストを通じて実現したいと思っていた学びの姿が、すでに同じ地球上にあることに心震えた。本稿では、森の幼稚園、小学校、自由高校について紹介したい。
前回、先生の教育観が変われば学校が変わるという話を書いた。今回は、その部分をさらに深めて話をしたい。私は2015年に「ティーチャーズ・イニシアティブ」(以下TI)という団体を多くの皆さんの協力の下、設立した。先生たちが主体的に学び、学校を超えてつながり合うことで、教育現場に大きな変化を起こせると考えてのことだ。
クエストエデュケーションの導入校は、今年度のスタート時点で265校となった。1校あたり仮に4人の先生が関わるとしたら、年間で1000人を超える先生がクエストの探究学習に取り組むことになる。
クエストエデュケーションの「企業探究コース」には、12社の企業が参画している。2021年度は、アデコ、カルビー、博報堂、富士通、三菱地所、メニコン、大正製薬、大和ハウス、テレビ東京、パナソニック、フォレストアドベンチャー、吉野家という、業種も社風も多様な企業群が生徒たちのインターンシップを受け入れている。生徒たちは5~6人でチームを組み、教室にいながらいずれかの企業のインターン生となり、ほぼ1年間にわたり活動をする。
クエストの授業には「ブレインストーミング」という話し合いの方法が用意されている。いまだ見ぬ未来について考えるとき、解決したい課題に取り組むとき、生徒たちはいつもこの手法を使って新しいアイデアを生み出す。
今回は、クエストを通じて、子供たちがどのように学んでいるのかを紹介する。クエストの最も新しいプログラムに、地域探求コース「エンジン」というものがある。子供たちが地域の企業のリソースを探し出し、それらを組み合わせたり、新たな使い方を考えたりすることで、地域の豊かな未来を描いていくプログラムだ。
2022年度から年次進行で実施される高等学校の学習指導要領には、「日本史探究」「理数探究」「総合的な探究の時間」など、「探究」と名のつく複数の教科・科目が導入される。「探究」とは、物事の本質を探し究めること。英語で言えばinquiry。問い合わせることや調べ上げることなど、調査・研究という意味を持つ言葉だ。
教育と探求社が全国の中学・高校に提供している探究学習プログラム「クエストエデュケーション(以下、クエスト)」について紹介しておきたい。クエストは、現実社会を題材に、学校の授業で正解のない課題に取り組むプログラムだ。テーマごとに多様なコースが用意されている。
私は、社会に出てからの人生の前半を新聞人として、後半を教育会社の経営者として過ごしてきた。新聞の仕事は17年、教育の仕事も今年でちょうど17年目となるが、どちらもとてもやりがいのある仕事だった。新聞社では社会の最前線で起こることをいち早く知ることができ、また世の中の新たな潮流を捉え、企画として世の中に発信していくこともできた。時代とともに生きているダイナミズムを感じることができる仕事だった。
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