今回は、クエストを通じて、子供たちがどのように学んでいるのかを紹介する。クエストの最も新しいプログラムに、地域探求コース「エンジン」というものがある。子供たちが地域の企業のリソースを探し出し、それらを組み合わせたり、新たな使い方を考えたりすることで、地域の豊かな未来を描いていくプログラムだ。2020年度に静岡で始動したばかりだが、今年度は鈴与、静岡銀行、静岡放送などの地元の有力企業15社が参画し、16校約2000人の生徒がプログラムに参加するなど、取り組みが拡大している。企業人と生徒たちが、真剣にぶつかり合いながら学びを深めている。
「エンジン」の授業は、こんな問い掛けから始まる。「学校を使ってお金儲けをしよう!」初回の授業で先生からそう言われた生徒たちは驚く。毎日通う学校という場所で、そんなことしていいのかと戸惑う。しかし、チームで話し合ううちに、タブーを破る密かな喜びもあって、次第に盛り上がり始める。そして、学校の中にビジネスにつながるどんなリソースがあるのかを探し出し、付箋に書く。「優しい学年主任の先生に、街で人生相談カフェをやってもらう」「理事長室にはお金になりそうなものが眠っている」などのアイデアが次々と出てくる。なぜか掃除箱を開けてじーっと中を見つめている女子生徒もいる。さながら宝探しゲームだ。
発表の場では、「運動場の端に畑を作り、芋を植えて秋になったら並木の落ち葉で焼いて焼き芋を販売する」「1年間使った教科書に改善点のレビューを書き、教科書会社に販売する」など奇想天外なプランが出てくる。
そうして楽しく創造的なムードができたところで、地元企業の登場だ。チームごとに担当する企業を決め、ホームページを見たり、企業人にインタビューをしたりしながら、その企業のリソースを探す。生徒たちは「リソースを見つける」という目的意識を持っているため、企業人の話を熱心に聞く。お仕着せの出前授業では見られない光景だ。その会社の技術力、人間力、企業理念、評判の良さ、さまざまなリソースを見つけ出し、それらの使い方を考え、独自の企画を練り上げて提案する。今ある課題を解決するのではなく、リソースを見つけて豊かな未来を創り出すのだ。その方が楽しくやりがいもある。
このプログラムの実証授業を2018年にやった際のアンケート結果を抜粋してグラフに示す。プログラム受講前と比べて「社会を良くする仕事につきたい」が13.3%、「自分に自信がある」が11.8%伸びている。大きな成果だと思う。