インクルージョン研究者/一般社団法人UNIVA理事/埼玉県戸田市インクルーシブ教育戦略官
次期学習指導要領の方向性について議論している中教審の教育課程企画特別部会では、多様な子どもたちを「2階建て」で複層的に包摂することを目指している。続く会合では、通級による指導の在り方が議論された。本記事では現状、通級による指導にどのような課題があるかを指摘した上で、部会で示された改善の方針案を踏まえ、柔軟な運用の参考になる「多層型支援システム」を紹介したい。
中教審特別部会で、次期学習指導要領改訂における「柔軟な教育課程」の方針が示された。文部科学省は「学校として編成する柔軟な教育課程」を1階、「個々に着目した教育課程特例」を2階として、2階建てで包摂する仕組みを提案している。鍵になるのは2階の知見を、1階の包摂性を高めるために生かす視点である。将来的にはカテゴリーごとの特例を超えた、より柔軟な仕組みも必要になろう。
インクルーシブ教育では、子どもの多様性に合わせることのできる柔軟なカリキュラムの編成が求められている。日本ではこれまで障害の有無や種類、程度で教育の場を分けており、柔軟な教育課程の編成を要する子どもたちが、学びの場を選択する際に困難を強いられてきた。次期学習指導要領に向け、在籍している学校・学級と教育課程をひも付けている現在の構造を再検討することが必要であろう。
社会では障害のある人をはじめ、外国にルーツのある人、子育てや介護をしている人など、多様な人と働くことが当たり前になってきている。一方、公教育では、子どもたちが多様な人と共存するどころか、出会う機会すら保障されていない。子どもたちが公教育で得るべきは、多様な他者と共存する経験だ。インクルーシブ教育は、分離を強化している現在の構造を変革することを目指す。
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