東海大学情報通信学部情報メディア学科教授
子どもたちを取り巻くICT環境の大きな変化は、学校で1人1台端末になったことだけではなく、情報通信ネットワークの活用も挙げられます。学習にクラウドが利用され、遠隔教育や家庭学習の充実も図られます。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、オンライン授業やオンライン朝の会の重要性も高まりました。
多くの学校や自治体で、健康面に関する対策に取り組んでいることと思います。ポスターやリーフレットなどを活用するのも効果的な方法です。例えば、文科省は「端末利用に当たっての児童生徒の健康への配慮等に関する啓発リーフレット」を、日本眼科医会は「目の健康啓発マンガ ギガっこデジたん!」を作成し、Web上で公開しています。
学校での視力検査は「370(サンナナマル)方式」により、視力0.3、0.7、1.0を基準として、学校生活に支障のない見え方であるかどうかを確認しています(図参照)。視力が0.7以上(A判定及びB判定)であれば教室の後方からでも黒板の文字がほとんど読め、0.7未満(C判定及びD判定)だと見えにくくなるとされます。また、1.0以上でない場合(B、C、D判定)は眼科受診が勧奨されます。
近視については、メガネやコンタクトレンズを使えば遠くもはっきりと見えるようになるので、大きな問題ではないと思われる人もいるかもしれません。しかし、近視が進行して度数が強くなると目の病気を合併する懸念があるため、特に子どもに対する近視の予防や進行抑制などの対策はとても重要です。
目の疲れと近視は異なるものですが、どちらも近くを長時間見続けることが原因の一つと考えられています。そのため、「近くを長時間見ないようにする」ことが、どちらに対しても予防になります。文科省による健康面に関する留意点では、その具体的な指針として、(1)目と画面との距離を30センチ以上離すことと(2)長時間の連続利用を避けて少なくとも30分に1回は20秒以上画面から目を離して遠くを見ること――を挙げています。
前回、教室が学習に適した明るい環境になっているが故に、大型提示装置や端末の画面が見づらくなってしまうことについて述べました。実は、画面を見づらくする要因がもう一つあります。それは天井の蛍光灯で、画面への映り込みが問題となります。学校のパソコン室や会社のオフィスでは、ルーバーと呼ばれるカバーを付けて、照明が画面に直接映り込むのを防ぐための対策が取られています。
学校教育に携わる方にとって、教室の環境や様子は慣れ親しんだものです。そのため、教室では黒板や紙の教科書と同じように、ICT機器も使うことができると思われるかもしれません。これは、ICTを活用した教育の方法という意味ではなく、メディアや機器という物の使い方においての話です。しかし、教室はICT機器などのディスプレーを用いることが、元々想定されているわけではありません。
ICT活用における子どもの健康で特に懸念されるのは、視力の低下と目の疲れでしょう。毎年、学校保健統計調査の結果が公表されると、裸眼視力1.0未満の子どもが増加したことが話題になります。2020年3月公表の調査結果では、小学校で34.57%、中学校で57.47%、高等学校で67.64%といずれも過去最多となり、年々増加傾向にあります。
子どもたちがデジタル機器を用いて学習するようになることで、眼精疲労や視力低下といった健康面への影響が懸念されています。私は、GIGAスクール構想以前からICTを活用した授業に取り組んでいる公立中学校において、子どもの健康面への懸念に関する継続した調査を行っています。この調査のポイントは、生徒と保護者の両方に協力していただいていることと、タブレット端末を使い始めてからだけではなく、使い始める前にも調査をしていることです。
子どもたちが学校で、1人1台のデジタル機器を使って学習する時代になりました。新しい情報メディアやディスプレーが実用的に使われるようになると、それらに対する期待とともに、使うことによる健康面への影響が懸念されることがしばしばあります。例えば、テレビやスマートフォンが登場して多くの人が利用するようになると、目の疲れや視力の低下が懸念されました。
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