子どもたちがデジタル機器を用いて学習するようになることで、眼精疲労や視力低下といった健康面への影響が懸念されています。私は、GIGAスクール構想以前からICTを活用した授業に取り組んでいる公立中学校において、子どもの健康面への懸念に関する継続した調査を行っています。この調査のポイントは、生徒と保護者の両方に協力していただいていることと、タブレット端末を使い始めてからだけではなく、使い始める前にも調査をしていることです。
実際には健康面に関わる18項目について質問していますが、ここでは「目が疲れること」「目が悪くなること(視力が低下すること)」「姿勢が悪くなること」についての結果を紹介します。質問には、「全く心配ではない」「あまり心配ではない」「少し心配である」「かなり心配である」の4段階で答えてもらいました。図で示しているのは、タブレット端末を導入する前の結果です。
生徒は3割くらいが目の疲れや視力の低下を心配しているのに対して、保護者は7割くらいが心配していました。また、姿勢が悪くなることについては、保護者の7割弱が心配しているのに対して、生徒は2割弱しか心配していませんでした。このように、保護者はとても心配していることと、生徒と保護者の意識にはギャップがあることが分かりました。
この調査において、保護者にはご自身のお子さんの健康面について回答してもらいましたが、実はさらに、保護者自身がタブレット端末やスマートフォンを使っていて、目の疲れを感じることがあるか、また、肩こりなどの身体の不調を感じることがあるのかを聞いています。その結果から、目の疲れを感じやすい保護者ほど、自分の子どもに対して目の疲れを心配していることが分かりました。
情報化社会においては、子どもたちが自らの健康について自覚を持ち、デジタル機器を利用していくことが必要だと考えています。しかし、それは一度話をすれば身に付くことではなく、子どもたちの様子をよく見ながら繰り返し指導していくことが必要です。学校では教師が、そして家庭では保護者が重要な役割を担います。
ところが、学校で子どもがどのように端末を使っているのかは、保護者にはよく分かりません。逆もそうです。そのため、学校と家庭が協働して子どもの健康面に配慮していくことが重要です。そして、協働する過程において、学校は家庭に、子どもに対してどのように配慮すればよいのかを伝えていただきたいと思っています。それは保護者の健康面に配慮することにもなり、子どもに対する抽象的な不安を軽減することにつながるのではないかと期待されます。この連載では、その一助になればと思い、デジタル機器を使う上での留意点や対策についても紹介していきます。