ある日、学校へ来ると、5年生のアンダーソンの姿が見えない。彼はいつも授業を真面目に受けることができないので目の離せない児童だった。私は「アンダーソンが前向きに取り組める授業を」と思い、この数カ月頑張ってきた。しかしその日だけでなく、彼はそれっきり学校へ来なくなった。他の教員に聞くと、きっと進級できないと思って来なくなったのだろうという。
マラウイという国を知っているだろうか。日本から約1万2300㌔離れた、アフリカ大陸東南部にある人口2000万人ほどの国で、サブサハラといわれるサハラ砂漠の南に位置する貧しい国々の中でもとりわけ貧しい国である。私はその国の算数教育の質の向上のために、2021年8月から1年9カ月をJICA海外協力隊として過ごした。勤める小学校は首都リロングウェから車で3時間ほどのカスング県スザという村にあった。水道もガスも、電気でさえほとんど通っていないその村で、私は教育の可能性を見ることになる。
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