三田国際学園中学校・高等学校 中学教頭
さまざまなキャリア理論がある中、ダグラス・ホールが主張する「プロティアン・キャリア」の考えは、変化の激しい今の時代に適合した最新のキャリア理論の一つです。もはや一つのアイデンティティーで生きられる時代ではなくなりました。だからこそ、中学生、高校生の多感な時期に、自分の人生と向き合う時間が必要です。
企業をはじめとする社会と学校が連携した教育の必要性は、「総合的な学習の時間」が導入された2000年代前半から叫ばれ続けています。連携において大切なことは、ダグラス・ホールが組織と個人の関係を「関係性アプローチ」で従来の上下関係から脱却するよう主張したように、企業と学校の関係も対等であることが大事です。
キャリア教育を実施する上で重要なことは、さまざまな団体や家庭と協働しながら進めていくことです。教員だけでキャリア教育を推進するとなると、困難なこともあります。
従来のキャリアでは、組織での評価を得ることが最優先とされるため、組織内外で人材が移動する頻度は「低い」のが当たり前でした。一方、プロティアン・キャリアでは「高い」のが特徴です。本校では中学段階で自分なりのアイデンティティーを獲得し、変幻自在なキャリアを意識した生徒が、高校では学校外の企業や団体と自然にコラボレーションするようになりました。
21世紀の社会で活躍するためには、伝統的なキャリアの概念に縛られないことが重要です。有名大学に進学することや有名企業に就職することなど、安定した組織に所属することを目的としたキャリアでは、変化の激しい時代の中で変化に適合し、しなやかに生き抜くことはできません。既存の組織に縛られることなく、自らの道を自分で切り開いていくことが、これからの社会では必要です。
新型コロナウイルスの流行によって、日本の多くの企業が打撃を受けました。2021年に早期・希望退職の募集を開示した上場企業は84社です。2年連続の80社超えは、リーマン・ショック後の09年・10年以来、11年ぶりとのことです。
社会の長寿化に伴い、今の中高生は「人生100年時代」を生き抜く必要があります。昨今では70歳までの雇用確保が企業の努力義務となり、人々の働く年数は延び続けています。そのため、自分の将来を見据えて、高いモチベーションで働き続けることが求められます。
「The Career is Dead」 1996年、ダグラス・ホールが出版した書籍のタイトルは「キャリアは死んだ」というものです。この言葉は、これからは個人がキャリアを模索していく必要があり、これまでの伝統的なキャリアは消滅していくことを意味します。伝統的なキャリアとプロティアン・キャリアの違いをまとめたものが次の表です。
21世紀は変化の激しい時代です。そうした時代の中で、教育も大きく変わらなければなりません。予測不能なVUCA時代では、組織と個人の関係性も変わる必要があります。ダグラス・ホールは「プロティアン・キャリア」の理論において、人と関わることで学び合う「関係性アプローチ」を主張しています。
社会は急激に変化しています。環境の変化、雇用の多様化・流動化、さらには誰もが想定していなかった新型コロナの感染拡大により、私たちはこれまでの「生き方」や「働き方」と向き合うことになりました。こうした社会の急速な変化に、教育現場も対応を求められています。変化に柔軟に対応しながら、自ら主体的にキャリアを形成していく次世代の育成が要請されているのです。
広告ブロック機能を検知しました。
このサイトを利用するには、広告ブロック機能(ブラウザの機能拡張等)を無効にしてページを再読み込みしてください