日本大学文理学部教授
本連載ではこれまで、幾つかの事例を取り上げて解決のヒントを示してきた。連載を終えるに当たり、望ましい保護者対応の在り方を整理してみる。 一つ目は、初期対応に配慮すること。初期対応については本連載の第5回で取り上げたが、最も大切なのは初期対応を丁寧に行うことである。苦情の申し出や面談の求めがあれば、服装や場所にも気を遣う必要がある。来校日時を約束した場合は、ジャージ姿のまま立ち話で済ませようとしてはならない。
埼玉県のある市立中学校での話である。修学旅行を数カ月後に控えたある日、強面の男性が校門の前に街宣車で乗り付け、「ある女子生徒の代理人」と称して校長室を訪問してきた。その生徒を「修学旅行に参加させよ」と言うのである。
神奈川県のある公立小学校では、7月に校外学習として磯遊びを実施している。その際、保護者ボランティア数人に引率と見守りを依頼するのが通例であった。暑い中での活動のため、児童には必ず水筒を持参し、水分を適宜補給するよう指導していた。ところが、1人の男児が水筒を持参し忘れたため、友達に水を分けてもらい、乾きをしのいでいた。この姿を保護者ボランティアの多くが見ていた。
保護者による苦情・要望は、幾つかのタイプに分類できる。図中の縦軸は学校として「対応はできる―対応が難しい」を表し、横軸はその申し出が「もっとも―おかしい」を表す。
今回は、筆者らが保護者や教師を対象に実施した全国レベルの意識調査※から、保護者などのクレームの実態を探ることにしよう。 まず、保護者の意識調査を見ると、苦情・要望の申出率は約3割(29.8%)に上る。回数は平均2.1回。「1回のみ」は54.4%、「2回」は約23%で、合計すると8割弱は2回以内に収まっている。
ちまたで「モンスターペアレント」という言い方がなされる。しかし、英語の原語を忠実に解釈すると「わが子を虐待する親」を意味する。つまり、元は「子にとってのモンスター」なのが、日本では「教員や学校にとってのモンスター」のように解されてしまったのである。
広告ブロック機能を検知しました。
このサイトを利用するには、広告ブロック機能(ブラウザの機能拡張等)を無効にしてページを再読み込みしてください