【困った保護者とどう向き合うか(2)】保護者の苦情・要望はどれくらいあるのか

【困った保護者とどう向き合うか(2)】保護者の苦情・要望はどれくらいあるのか
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 今回は、筆者らが保護者や教師を対象に実施した全国レベルの意識調査※から、保護者などのクレームの実態を探ることにしよう。

 まず、保護者の意識調査を見ると、苦情・要望の申出率は約3割(29.8%)に上る。回数は平均2.1回。「1回のみ」は54.4%、「2回」は約23%で、合計すると8割弱は2回以内に収まっている。一方で、中には「30回」「35回」という強者もいる。そうした保護者には、どのような特徴が見られるのだろうか。

 結果を見ると年齢や性別による違いはない。わが子に対するしつけをしっかり行っている者が比較的多く、子供との会話も活発で、学校や勉強のことをよく話題にしている。大きな特徴は「学校の不満があっても我慢する」方だという回答が著しく低いことである。つまり、苦情・要望の多い保護者は学校や勉学に対する関心が強く、自らもしつけに熱心だけれども、学校に不満があると我慢できないという傾向が描き出されている。

 一方、そうした苦情・要望を1年の間に受けた教師の割合は6割強に上る。校種別では、小学校が中学校より若干多い。苦情・要望を受けた回数の平均は約2.2回で、小学校2.3回、中学校2.0回となっている。驚くべき点は、「70回」と回答した教師が1人、「50回」が4人いたことである。これらを含め、年間10回以上が約1割を占める。恐らくその多くは特定の保護者によるものであろう。苦情・要望を10回以上受けた教師は、女性より男性に多いが、教職経験年数による差異はない。

 苦情を多く受けた教師は、他の教師に比べて、「保護者から苦情が増えた」と回答した者が多く、苦情が増加したと捉えている。同時に、保護者が「わが子中心にものを考える傾向がある」「学校への過剰な依存傾向がある」と認識する傾向にある。

 前述したように、学校や教師に苦情・要望を申し出た経験のある保護者は約3割だが、教師の約6割が苦情・要望の申し出を受けている。苦情・要望が多い保護者は教育熱心のあまり、学校に不満があると我慢ができず、苦情などの行動に出る傾向にあると言えよう。保護者対応においては、第一にそうした背景の理解が必要になる。

※研究代表者:佐藤晴雄「家庭教育と親子関係に関する調査研究」(公財)日本教材文化研究財団、2016年。
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