兵庫県立大学准教授、学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議座長
昨年、WHO(世界保健機関)が、「ゲーム障害」を国際疾病として認定しました。「ネット依存」や「ゲーム依存」の問題は深刻で、日本でも治療を専門に行う医療機関が出始めています。
今回の通知は持ち込みがなし崩し的に認められようとする現状の流れに、歯止めをかける役割を担っています。先鋭的な人の中には、「そんなブレーキは不要」と言う人もいるかもしれませんが、今のままでは事件やトラブルが増え、教員や子供たちにとっても良いことはありません。この見解は、現場の関係者であれば、理解・納得してもらえると思います。
携帯電話の持ち込みを認める際の4条件のうち、最も重要なのは4つ目の「自律的なルールを生徒や保護者が主体的に考え、協力して作る機会設定」だと私は考えています。 一般企業の人と話すと「今の若者は、ただ『やりなさい』と指示をしても、前向きに取り組まない。
今回の通知で、携帯電話持ち込みのルールが最も変わったのは中学校です。「原則禁止」は変わっていませんが、次の4条件を満たせば、「持ち込みを認めるのが妥当である」とあります。
日本の公立学校のセキュリティーは、極めて緩いものがあります。多くの場合、各教室の鍵は南京錠で、移動教室などの時は、その鍵が職員室の壁面に無造作にぶら下げられています。隙を見て持ち出すことは比較的容易です。「生徒が勝手に合鍵を作って持っていた」という事例もあります。学校の安全管理は、「性善説」を前提に成り立っていると言っても過言ではないでしょう。
携帯電話の持ち込みルールについて、約10年ぶりに文科省が通知を出しましたが、そこに至るまでの経緯を簡単に振り返っておきます。 契機となったのは、2018年6月18日に起きた大阪北部地震でした。最大震度6弱を記録したこの地震は、子供たちが登下校中の午前7時58分に発生しました。高槻市では、登校中の小学生がブロック塀の下敷きになって亡くなるという悲しい事故も発生しました。
グラフは内閣府の調査です。一見して分かる通り、インターネットの利用率は、年齢とともに上昇します。しかし、2017(平成29)年の「4歳」の利用率が39.7%で、「5歳」の36.8%を3%近く上回っています。単なる「誤差」で片付ければ話は簡単ですが、果たして本当にそうなのか――学生たちとゼミの時間にじっくり議論してみました。
本連載の第1回でも書いたように、すでに都市部では「許可制」で、携帯電話の持ち込みを認めている学校が少なくありません。学校としても、保護者から安全面を理由にされたり、「放課後に塾に行かせるので」と言われたりすれば、むげに断ることは難しいでしょう。その結果、生徒の半分以上が、携帯電話を持参しているような中学校も出てきているようです。
内閣府の「令和元年度青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、スマホを含む携帯電話の所有率は、小学生が55.5%、中学生が66.7%、高校生が97.1%です。小学生と中学生の所有率は年々高まっており、携帯電話のうちスマホの占める割合も増え続けています。この調子だと、小学校高学年の大半がスマホを持っている時代はそう遠くないでしょう。
6月下旬、「文科省が携帯電話の学校への持ち込みを容認した」という趣旨の報道が新聞各紙でなされました。社会のICT化が進む中で、子供が学校へスマホを持っていく時代が到来するのかと思った人もいるかもしれません。
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