内閣府の「令和元年度青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、スマホを含む携帯電話の所有率は、小学生が55.5%、中学生が66.7%、高校生が97.1%です。小学生と中学生の所有率は年々高まっており、携帯電話のうちスマホの占める割合も増え続けています。この調子だと、小学校高学年の大半がスマホを持っている時代はそう遠くないでしょう。
しかし、スマホは高性能・多機能な代物ゆえ、使い方を誤れば事故やトラブルも起こります。かつて「出会い系サイト」を巡る事件が頻発し、これを規制する法律が制定され、関係者が尽力したことで、「出会い系サイト」での被害児童数は激減しました。具体的には、2003年の1278人から2017年は29人にまで減少し、現在はデータの公表さえされていません。昨今は被害の現場が出会い系サイトからSNSに舞台が移り、被害児童数は2008年の792人から2019年は2082人と急増しています。被害の起因となったサイトの第1位は子供たちが日常的によく使うTwitterです。刻々と課題は変わり、被害はどんどん子供たちの近くに迫ってきています。
また、近年は、ネットやゲームに夢中になってしまう子供も数多くいます。2019年には、WHO(世界保健機関)が、「ゲーム障害」を国際疾病として正式に認定するなど、状況は年々深刻化しています。最近のオンラインゲームや動画アプリは「中毒性が高い」とまで表現する人がいるほど、大人であっても自制心を働かせるのは容易ではありません。ましてや、中高生や小学生にきちんとした自己マネジメントを求めるのは酷かもしれません。
今回のコロナ禍で、子供たちの多くはスマホ、ネット三昧の日々を送りました。男の子は、オンラインゲームに夢中になり、女の子はSNSを使って友達とやりとりばかりしていました。また、隙間の時間には男女ともYouTubeを見ていました。子供たちのスマホ、ネットの利用時間は大幅に増え、生活リズムを大きく崩した子供も多数いました。コロナ休校明けに私が接した子供たちの多くは、自分自身を「ネット依存だったかもしれない」と表現しています。
このように、数多くのリスクがあるにもかかわらず、使用のルールや制限なども設けずに、使わせてしまっている場合も多々あります。例えて言えば、小さな子供がバイクに乗って、ヘルメットも被らず、街中を猛スピードで走り回っているような状況です。スマホは高性能なので、まさに大型バイクなのです。幼稚園児が三輪車の代わりに大型バイクで高速道路を逆走しているようなイメージです。
私たちの社会はモータリゼーションが進展し、社会全体で交通事故防止に向けて取り組んできました。警察は取り締まりを強化し、学校や家庭は交通安全教育に力を入れてきました。その結果、死亡事故の数は減少し、現在はピーク時の5分の1程度にまで減りました。これと同様に、スマホやネットも使用のルールを作り、きちんと制限をかけ、その危うさを子供たちに周知していくことで、事故やトラブルを防いでいく必要があります。
この問題は、持ち込み問題とは別に考えるべき問題だと言う人もいますが、これから高度情報化社会を生き抜いていく子供たちのために、文科省の通知を良き機会として、社会全体で取り組んでいかなければならないでしょう。