本連載の第1回でも書いたように、すでに都市部では「許可制」で、携帯電話の持ち込みを認めている学校が少なくありません。学校としても、保護者から安全面を理由にされたり、「放課後に塾に行かせるので」と言われたりすれば、無下に断ることは難しいでしょう。その結果、生徒の半分以上が、携帯電話を持参しているような中学校も出てきているようです。
これまでは学校長の判断だったので、対応はさまざまです。毎朝、教員が子供たちの携帯電話を回収し、それを袋に入れて校長室で保管している所もあります。学校によっては、預かる携帯電話の数が300台にも上りますが、スマホ1台10万円と考えれば、その総額は約3000万円に上ります。治安が悪い国なら、覆面姿の窃盗団が押し寄せて来ても不思議ではないでしょう。幸いこれまで、そうした大規模な盗難事故は起きていませんが、このまま不用心な管理が続けば、そうした事件も十分に起こり得ます。
一方、携帯を子供自身にカバン等で自主保管させている学校では、音楽や体育等で教室を外している間に、盗難される可能性があります。もちろん、移動の際は教室の戸を施錠するわけですが、簡単に破壊できる南京錠を使い、その鍵が職員室にぶら下げられているようなケースも少なくありません。
自主保管の場合は、授業中に「こっそり使い」をする子供も必ず出てきます。オリンピックやワールドカップの期間中は、気になって仕方がない子が多いでしょう。部活動顧問の厳しい指導をこっそり撮影して、「体罰だ」「しごきだ」などとコメントを添えてネットに上げる子も出るかもしれません。実際にそういう投稿が、これまでも繰り返されてきています。文脈の中では適切な指導も、一部だけ切り取ってアップされれば、「不適切だ」と世間に叩かれ、炎上する可能性もあります。
学校が預かっても、子供によってはダミーの携帯等を教員に渡し、授業中にこっそり使う可能性もあります。以前、故障した携帯がメルカリでたくさん出品されていましたが、これを主に購入していたのはこのような用途だったとの噂です。
本来なら鍵付きのロッカー等を用意し、そこで生徒に自主管理をさせるのよいでしょう。これなら、盗難のリスクも下がるし、預けている間に故障等があっても、学校が責任を問われることはありません。もちろん、ここにダミーを入れる子供も出てくるでしょうが、この点は罰則規定を設けるなどして対応していくしかありません。いずれにせよ、学校はいち早く保管のルール等を整備するとともに、トラブル発生時の責任の所在などを明確にしておく必要があります。
これから時間をかけて、この問題に社会全体で向き合っていく必要があるでしょう。通知はその第一歩だと捉えるべきです。