水戸市立石川小学校校長
私の頭の中で大きな存在だったのが、「2030年問題」とウェンガーの「正統的周辺参加論」です。今の小学生が成人する頃、超少子高齢化社会がやって来ます。Society5.0が現実となり、AIが発達する中、予測不可能な社会の中を子供たちは生き抜いていかないとなりません。これまでのような受け身の学習を進めているだけでは、子供たちの未来に危機感しかありません。
「いしかわスタイル家庭学習」には、大きな柱が2つあります。1つは、これまで説明してきたように「家庭学習を受け身なものから主体的なものに転換する」ということです。そして、もう1つは「教員の働き方改革」です。
本連載の第3回でも少し触れましたが、当初この「いしかわスタイル家庭学習」は2020年度からの実施を考えていました。20年1月から準備をして3月に保護者に説明、試行期間を経て20年度からの本格実施というものでした。
「校長先生、自学見てください!」「昨日は、これをやりました!」と、毎日のように子供たちが校長室に自学ノートを見せに来てくれます。 子供たちのノートに書かれている内容は、千差万別です。ラグビーワールドカップが開かれていた頃には、対戦相手国の国歌について、現地語とその翻訳をノートにまとめた6年生もいました。
保護者の意見はウェブアンケートで集約し、ホームページでその結果を公開してきました。今年8月に実施したアンケートで、「これまでの自学をどう思いますか」と聞いたところ、「とても良い」が13%、「良い」が30%、「どちらとも言えない」が42%、「良くない」が13%、「とても良くない」が2%となりました(図参照)。
「いしかわスタイル家庭学習」が定着する前は、本校でもドリル宿題がメインでした。子供たちは毎朝登校すると、前日の宿題(漢字ドリル、計算ドリルなど)を提出します。クラスによっては、宿題を忘れずに提出したかどうかを確認する係がいることもあります。宿題を忘れると、名簿に赤で印を付けられます。中には、やむを得ない事情で宿題をやってこない児童もいますが、理由はお構いなしです。
2019年11月22日に体育館で全保護者に向けてプレゼンをした際、最後に「ご質問がある方はいつでもどうぞ」「校長が直接お答えします」と伝えました。家庭学習の大転換ですから、保護者の中にも混乱が生じると思ったからです。校長として、どんな意見にも真摯に応えようと覚悟を決めていました。
当初、ドリル宿題廃止は、校長2年目となる2020年度になってからにしようと考えていました。というのも、昨年度は新任校長として本校に赴任したばかりで、校長としての業務に追われる日々の中、まずは学校の実態をじっくり見てからにしようと思っていたからです。
小学校で毎日出される宿題は、パターンがほぼ決まっているのではないでしょうか。主たる内容は、計算ドリル、漢字ドリル、音読です。私は、ドリルや音読を否定するつもりはありません。ドリルも音読も大きな学習効果があり、学習習慣を定着させたり、基礎基本を徹底させたりする上で必要なものだと思っています。
皆さんは小学生の宿題と聞くと、どういったものを想像するでしょうか。一般的には計算ドリル・漢字ドリルが挙げられると思います。今回の連載のテーマである「ドリル宿題廃止」と聞くと、ドリルは宿題として良くないものだから廃止したんだろうと思われるかもしれませんが、ドリル自体を否定しているわけではありません。ポイントは「2030年問題」です。
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