前回、学級規模の縮小が児童生徒の学力を向上させる効果を持つことを示したが、そのことについて分析を進めた結果、以下の2点が追加的に明らかとなっている。1つ目は、学級規模を大胆に縮小したときに学力向上の効果が大きくなるという点である。学級規模を10人縮小するといっても、40人を30人にする場合と、30人を20人にする場合とでは効果の大きさが異なる。
前回示したように、学級編制標準(学級規模の上限)を引き下げる形の少人数学級政策は、児童生徒だけでなく、教員配置数の増加を通して教員にも影響を及ぼす。今回はまず、児童生徒に与える効果を見ていくこととしよう。学級規模が児童生徒に及ぼす影響のうち、古くから研究が行われ、近年に至っても活発に研究されているのは学力への効果である。中でも有名なのは「グラス=スミス曲線」であろう。
公立義務教育諸学校の学級編制の仕組みは「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(義務標準法)に定められている。現在、義務標準法は同学年で編制する学級(単式学級)の上限人数の標準(学級編制標準)を「小学校1~4年=35人」「小学校5~6年=40人」「中学校=40人」と定めている(2023年度現在)。
本連載では「エビデンスで示す少人数学級の効果」と題して、少人数学級政策がもたらす効果について多面的に考えたい。 初めに、タイトルにもある「エビデンス」という言葉について整理する。日本語では単に「根拠」や「証拠」と訳されたり、頭に言葉を足して「科学的な根拠」や「客観的な証拠」と訳されたりするが、その解釈は一様ではないように見受けられる。
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