公立義務教育諸学校の学級編制の仕組みは「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(義務標準法)に定められている。現在、義務標準法は同学年で編制する学級(単式学級)の上限人数の標準(学級編制標準)を「小学校1~4年=35人」「小学校5~6年=40人」「中学校=40人」と定めている(2023年度現在)。複式学級や特別支援学級についても、別途定められている。
義務標準法は、上記の人数を「標準」として都道府県教育委員会が学級編制の「基準」を定め、市町村教育委員会がその「基準」に基づいて学級編制を行うと定めている。従って、都道府県が「標準」を下回る「基準」を独自に定め、少人数学級を編制することも可能となっている。
こうした標準や基準は、学級編制における1学級の人数の上限として機能する。例として、小中学校の単式普通学級を考えよう。上限が40人の場合、ある学年が80人であれば上限いっぱいである40人の大規模学級が2学級編制される。もし、学年が81人であれば、40人を超える学級は編制できないため、27人の小規模学級が3学級編制される。同じ学年で仮に上限が35人であれば、80人でも81人でも3学級が編制されることになる。
この例から明らかなように、学級編制の「標準」や「基準」の引き下げは、学級の人数を縮小するだけでなく、編制される学級数の増加をもたらすので、各学校に配置される教員の人数を増やすことにつながる。つまり、義務標準法の正式名称が示す通り、学級編制の標準は教職員定数と密接に関連している。
2021年3月に義務標準法が改正され、公立小学校の学級編制標準は順次、35人に引き下げられている。法改正の背景には、コロナ禍の学校において「密」の発生を避けなければならないという社会的な懸念があったことは記憶に新しいが、こうした学級編制標準の引き下げという形の少人数学級政策は、学級規模の縮小と同時に学級数、さらには教職員定数の増加をもたらす。従って現下の少人数学級政策は、児童だけでなく教員にも影響を与える可能性が高いと考えられる。
ところで、学年の人数を恣意的に制御することは、学校にも教育委員会にも保護者にも不可能である。従って、基準に基づいて学級編制を行った結果が大規模学級になるか小規模学級になるかは、偶然によって決定される側面が強い。このことは、質の高いエビデンスを得る上で重要な条件となる。