前回述べたように、子どもたちの適切なデジタルメディア利用を促しながら発達をサポートしていくことが、現代の大人や社会の大きな課題になってきています。子どもの発達を促進する良質なデジタルコンテンツとして、電子書籍の利用を対象とした研究結果があることも紹介しました。一方で、子どものデジタルメディア利用については、それが発達に悪影響をもたらすのではないかという懸念も根強くあります。本連載は、今回から数回に分けて、子どもの「デジタル読書」の現状、「デジタル読書」が子どもに及ぼす影響、読書とデジタルのより良い関係について述べていきたいと思います。
現代の子どもの多くは、本に触れる時間の何倍もの時間をデジタルデバイスとともに過ごしています。東大CEDEPとポプラ社が2021年に行った調査では、幼児の家庭におけるスクリーンタイムは平日で約2時間、休日では3時間近くにもなりました。今や10歳児の61.4%、15歳児の96.4%が、自分専用のスマートフォンを所有しています。個人専用の端末を持つことによって、小学生以降、スクリーンタイムはさらに増加していきます。
読書が人の心を豊かにする活動であることを疑う人はあまりいないでしょう。特に子どもにとって絵本や本との触れ合いは、その成長をさまざまな面から支えている大切な活動だと広く信じられています。
東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(東大CEDEP)と株式会社ポプラ社は、2019年に共同研究「子どもと絵本・本に関する研究」プロジェクトをスタートさせました。私は20年からこの共同研究プロジェクトに参加し、現在までさまざまな研究に携わってきました。本連載では、この共同研究プロジェクトから得られた知見も紹介しながら、デジタル時代の子どもと読書の関係、これからの読書推進の課題と可能性などについて考えていきます。
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