第3回 子どものデジタルメディア環境の実際、発達との関連

第3回 子どものデジタルメディア環境の実際、発達との関連
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 現代の子どもの多くは、本に触れる時間の何倍もの時間をデジタルデバイスとともに過ごしています。東大CEDEPとポプラ社が2021年に行った調査では、幼児の家庭におけるスクリーンタイムは平日で約2時間、休日では3時間近くにもなりました(図参照)。今や10歳児の61.4%、15歳児の96.4%が、自分専用のスマートフォンを所有しています(こども家庭庁による2023年のデータ)。個人専用の端末を持つことによって、小学生以降、スクリーンタイムはさらに増加していきます。

東大CEDEP×ポプラ社による調査結果より:幼児が家庭で諸活動に費やす時間
東大CEDEP×ポプラ社による調査結果より:幼児が家庭で諸活動に費やす時間

 デジタルメディアが子どもにとって急激に身近なものになった現在、心身の健全な発達を促すためには子どものスクリーンタイムを減らすべきだと考える人も多いかもしれません。確かに、デジタルメディアの利用が発達に悪影響をもたらす可能性を指摘する研究結果は数多くあります。長過ぎるスクリーンタイムは、外遊びや勉強など他の大事な活動の時間を奪いますし、ぐずる赤ちゃんを落ち着かせるためにスマホの動画を見せるといった「電子おしゃぶり」的な利用、スクリーンをつけたまま食事など他の活動を行う「バックグラウンド視聴」など、不適切なデジタルメディア利用は発達に悪影響を及ぼす可能性が高いと考えられます。

 一方で、デジタルメディア利用がもたらす発達上の良い効果も明らかになってきています。例えば、現代の子どもを対象とした場合、スクリーンタイムが長い子どもほど語彙(ごい)力が高いことが分かっています。そして、より重要なのはデジタルメディア利用による発達への影響は、スクリーンタイムの長さよりもどのような活動をするかという「活動の質」に大きく左右されるということです。スクリーン視聴による言語発達の促進効果も、教育的なテレビ番組や電子書籍を利用している際に特に大きくなることが分かっています。

 子どものデジタルメディア利用については、単に時間を制限するのではなく、不適切な利用方法を避け、良質のコンテンツを利用していくことが重要な課題になりつつあります。これは、子どものデジタルリテラシー育成の観点においても重要です。デジタルデバイスを上手に活用する力を身に付けることは、言うまでもなく現代の子どもにとって重要な課題です。子どもをデジタルデバイスから遠ざけているだけでは、こうした力は身に付きません。私たちには、子どものデジタルメディア環境を整え、その適切な利用を促し、活動を通じてデジタルリテラシーを育むためのサポートが求められているのです。

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