全6回にわたって非正規教員の課題を探ってきたシリーズ「非正規教員の葛藤」では、特設フォームから読者の意見や感想も募集した。最終回では、これらを紹介しながら、改めて非正規教員を巡る「葛藤」を考えたい。そして、第1回に登場し、シリーズのきっかけをつくった非正規教員の森本健太さん(仮名)は今どうしているのか、もう一度話を聞くことにした。各地で教員採用試験が早期化される中、非正規教員を経験してきた人はどんな気持ちで今年の試験に臨んでいるのだろうか。その気持ちに寄り添うべきなのは、誰なのか。
海外の非正規教員が置かれている状況について、前回は日本と同じアジア圏にある台湾とシンガポールを見た。台湾やシンガポールでは教員養成や採用システムに違いこそあれ、非正規教員の職務満足度は高かった。今回はさらに地域を広げて、オーストラリアとオランダを見てみよう。両国はそもそも日本とは「労働」に関する制度や社会的な認識がだいぶ異なっている。教員たちはそこでどのような働き方をしているのだろうか。共同研究を行っている椙山女学園大学教授の山田真紀さんにオーストラリアの事情を、共栄大学元教授の和井田節子さんにオランダの事情をそれぞれ聞いた。
非正規教員が存在するのは日本だけではない。教育制度や社会構造は異なるものの、海外の国や地域で働く非正規教員の状況を捉えることで、日本の非正規教員の課題を解決するヒントが見えてくるかもしれない。そうした問題意識から海外の非正規教員の実態を国際比較した共同研究がある。2回に分けて、台湾、シンガポール、オーストラリア、オランダの非正規教員の実情について、共同研究を行っている研究者に聞いた。まずは同じアジア圏にある台湾とシンガポールについて研究する名古屋大学大学院教育発達科学研究科の菊地原守さんに聞いてみた。
非正規教員の当事者のエピソードから始まり、各地の教員採用試験における非正規教員経験者枠の状況、そして、非正規教員の問題に取り組んできた現場の教員や研究者に、この問題の論点を聞いたシリーズ「非正規教員の葛藤」。第2期は、より俯瞰(ふかん)的な広い視点でこの問題を捉えていきたい。そもそも、教員不足や教員採用試験の倍率低下が起きている一方で、なぜ非正規教員は減らないのか。突き詰めていくと、国の政策に翻弄(ほんろう)される自治体の姿が浮かび上がってくる。
各地で教員不足が深刻化している一方で、学校現場を支える非正規教員の数も拡大している。非正規教員の問題はいつから存在し、どのように議論されてきたのか。非正規教員の置かれている立場の改善に取り組んできた教員や、日本の非正規教員の問題に詳しい研究者に話を聞いた。非正規教員の問題は正規の教員の働き方にも深く関わる問題だ。
教員採用試験を毎年受験するも落ち続け、臨時任用を続ける非正規教員は全国にどれくらいいるのだろうか。最近の教員不足を受けて、自治体では非正規教員経験者に対し、一次試験の一部を免除するなどの取り組みを行っている。この枠組みを調べることで傾向が把握できるのではないか。教員採用試験を実施している自治体に問い合わせてみたところ、その実態は予想以上に複雑だった。
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