国語の授業に宇宙教育 生徒の作品は補給機で宇宙へ

国語の授業に宇宙教育 生徒の作品は補給機で宇宙へ
「宇宙に行ける時代がくる」と語る山中勉氏
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国語の表現指導に宇宙教育を取り入れるという、授業実践の新たな取り組みが1月22日、東京都板橋区立高島第二中学校(長田洋幸校長、生徒345人)であった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の主幹研究員などを歴任した山中勉氏による出前授業として、1年生を対象に実施された。

山中氏は宇宙航空システムエンジニアとして、1982年からロケットの企画・研究開発に従事。現在はIHIの宇宙活用・社会活動担当調査役として、学校と連携しながら国際宇宙ステーションを利用した教育を展開しており、エッセー「空を見上げて」は中学校の国語の教科書に掲載されている。

山中氏は冒頭、「間もなく、宇宙に行ける時代がやってくる」と投げ掛け、生徒が意図を図りかねる様子を見せると、「70キロの人間を打ち上げるのに、これまでは約2億円かかっていたが、現在は約2000万円になり、2040年までには20万円になると言われている」と説明した。

生徒が「ハワイ旅行と同じくらいだ」などと発言したのを受け、「宇宙飛行士でなくても宇宙へ行ける日がもうすぐ到来する。その第一歩が今日の授業だ」と応じた。

アラブ人初の宇宙飛行士の詩を基に、新たな見方について考えさせた
アラブ人初の宇宙飛行士の詩を基に、新たな見方について考えさせた

また山中氏は、アラブ人初の宇宙飛行士の話を紹介し、同宇宙飛行士が宇宙でどのように感じたかを生徒らに想像させ、発表させた。その後、同宇宙飛行士が書き記したものだとして、「最初は皆、自分たちの国を指さした。3日たつと、自分たちの大陸を指さし始めた。5日たつと、たったひとつの地球しかなかった」(訳・山中氏)という詩を紹介。「100㎞を超える上空に国境はない」と語った。

その上で、「置かれた立場が変わると、見方が変わる。自分を何者と捉え、他者に対してどう表現するかもおのずと変わる」と話し、「もし宇宙に行ったら、自己に対する認識はどのように変わると思うか」と投げ掛けた。

授業では今後3時間をかけ、宇宙に向けて発信するメッセージを生徒一人一人に作成させる。

授業を担当する同校の前川智美教諭は「宇宙規模という広い視野で物事を考え、表現する力を育成したい」と語る。

メッセージはメモリーカードに収め、5月中旬に種子島から打ち上げられる宇宙ステーション補給機「こうのとり9号機」で国際宇宙ステーションに送る予定だといい、山中氏は「国語の授業で書いた作品を宇宙に送るのは、世界でも前例がないのではないか」としている。

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