中学生の8割、小学生・高校生の9割が平日に適正な睡眠時間を確保できていない――。そうした実態が9月3日、寝具メーカー大手・西川が公表した「nishikawa 睡眠白書 2025」で明らかになった。白書では、平日の慢性的な寝不足と休日の「寝だめ」によって、時差ぼけと同様の不調「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)」を引き起こすと指摘。このリスクは学年が上がるほど増すと警鐘を鳴らしている。
白書は2018年から毎年公表しており、今年で8回目。日本睡眠科学研究所による監修のもと、10代~70代の男女1万人を対象に、睡眠に関する意識調査や分析を行ったもの。25年の調査は7月4~5日に、基本調査に回答した1万人のうち3000人に聴取を実施した。
それによれば、平日に適正な睡眠時間を確保できていない小学生は88.2%、中学生は76.8%、高校生は90.8%に上り、いずれも8割以上の子どもが睡眠不足の状態にあった。休日についても小学生は73.9%、中学生は46.4%、高校生は70.4%が適正な睡眠時間を取ることができていなかった。
厚労省が示した指針「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生は9~12時間、中高生は8~10時間の睡眠の確保を推奨している。
また白書では、平日と休日の睡眠リズムが異なることから体内時計にずれが生じ、時差ぼけのような不調を引き起こすソーシャルジェットラグについても言及。ソーシャルジェットラグは起床時刻と入眠時刻の中央時刻(中央値)の差で算出され、平日の中央時刻と休日の中央時刻の差が大きいほど、体内時計の乱れが懸念される。
今回の調査では▽小学校低学年 0.5時間▽小学校中学年 0.7時間▽小学校高学年 0.7時間▽中学生 1.6時間▽高校生 2.0時間――となり、ソーシャルジェットラグの時間は学年が上がるほど増加する傾向が見られた。加えて、睡眠の質や満足度が低い子どもほどソーシャルジェットラグの時間が顕著に増加。睡眠の質や満足度を「十分満足」と回答した子どもが0.7時間だったのに対し、「睡眠の質に全く満足していない」子どもでは3.6時間に上った。
睡眠時の悩みを巡っては、10代男性は「疲れが取れない」が23.5%で最多。さらに▽寝つきが悪い 17.6%▽睡眠時間が短い 17.6%▽睡眠時に腰が痛い 11.8%▽途中で目が覚める 11.8%▽寝室の温度・湿度が最適ではない 11.8%▽睡眠時の髪の毛へのダメージ(摩擦や乾燥など) 11.8%――が続いた。
一方、10代女性は「途中で目が覚める」が30.8%でトップ。続いて▽寝つきが悪い 23.1%▽なかなか起きられない 23.1%▽疲れがとれない 23.1%▽少しの物音や光ですぐに目が覚める 15.4%――となった。
これらの調査結果を受け、白書では子どもたちの睡眠不足が常態化しているとして、「身体的・精神的発達に長期的な悪影響を与える可能性が懸念される」と指摘。ソーシャルジェットラグについても「思春期特有の体内時計の夜型化、朝の部活動や夜間の塾などの、社会的なスケジュールの影響もあり、リズムの乱れが深刻化していることを示唆する」と分析している。