身体症状の数が多い子どもほど 抑うつ症状のリスク高く

身体症状の数が多い子どもほど 抑うつ症状のリスク高く
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 頭痛や腹痛など、月に1回以上経験する身体症状が多い子どもほど、抑うつ症状を併発するリスクが高まることが9月2日、全国の10~15歳の子どもを対象に行った国立成育医療研究センターの大規模調査で明らかとなった。子どもが言葉では表現しにくいメンタルヘルスの不調に、周囲の大人が気付く手がかりになる可能性がある。

 国立成育医療研究センターの研究グループは2021年12月8~26日にかけて、全国の自治体から無作為に選ばれた10~15歳の子ども2268人に質問票調査を実施。過去6カ月以内に頭痛、腹痛、背部痛、めまいの4種類の身体症状の経験頻度と、国際的に広く用いられている思春期用の質問票(PHQ-A)を用いて、抑うつ症状の程度を評価し、身体症状の数や頻度と抑うつ症状との関連を分析した。

 その結果、訴える身体症状の種類の数が多いほど、抑うつ症状のリスクが顕著に高まることが明らかとなった。4種類全ての身体症状がある場合のリスクは、症状がない子どもの16.4倍に達した(=図)。一方で、特定の身体症状が他の身体症状と比べて突出して抑うつ症状のリスクが高い傾向は見られなかった。

【図】子どもが感じた身体症状の数と抑うつ症状のリスクの関係=提供:国立成育医療研究センター
【図】子どもが感じた身体症状の数と抑うつ症状のリスクの関係=提供:国立成育医療研究センター

 また、抑うつ症状は女子の方が男子よりも有意に高く、抑うつ症状のある子どものうち、ほぼ86%が何らかの身体症状を月に1回以上経験していた。

 身体症状の頻度は「なし」「月に1回」「週に1回」「月に2回以上」「毎日」の5段階で調査したが、おおむね頻度が高いほど抑うつ症状のリスクも高くなった。抑うつ症状を見つける上では「月に1回」が最も検出能力が高いという結果を得られた。

 これらの結果は、子どもが訴える身体症状の数や頻度に着目すると、抑うつ症状の早期発見に役立ち、家庭や学校、プライマリケアの現場で活用できる簡便なスクリーニング方法になる可能性を示しているという。

 研究成果は小児科領域の国際的な学術誌『European Journal of Pediatrics』に8月20日付で掲載された。

 

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メンタルヘルス 近年、子どもの自殺や不登校の増加などから、子どもの心の病気への対応が課題となっている。心のSOSのサインは、体調面の不調や生活リズムの乱れ、学校に行きたがらない、無口になったなどの言動に表れることもある。不登校の背景に心の病気が関わっている場合もある。

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