広南中、佐和山小にNITS大賞 優れた実践事例を評価

広南中、佐和山小にNITS大賞 優れた実践事例を評価
「小中一貫で資質・能力育成」をテーマに事例発表する広島県呉市立広南中学校の荒本礼二教頭
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 教職員支援機構(NITS)の第3回「NITS(ニッツ)大賞」活動発表会が2月2日、都内で開かれ、大賞に広島県呉市立広南中学校の「小中一貫で資質・能力育成」(発表者・荒本礼二教頭)と、滋賀県彦根市立佐和山小学校の「あこがれがつなぐ学校文化」(発表者・川端清司教諭)が選ばれた。審査委員の評価が分かれたため、最高得点を獲得した2校が大賞を受賞した。

 NITS大賞は、学校現場の課題解決に向けて全国の教職員や学校などが実践した活動を募集し、優れた事例を表彰する制度。事例集を作成してウェブサイトで公開することにより、学校現場の課題を解決するリアルな好事例の共有を図る。2月2日をニッツの日と定めて毎年、表彰式を行っている。

 3回目となった今回は▽カリキュラム・マネジメント実践部門 76点▽働き方改革実践部門 60点▽地域とともにある学校実践部門 61点▽校内研修プログラム開発・実践部門 125点--の計322点の応募があった。応募は前回の86点に比べ、約3.7倍に増えた。優秀賞の審査基準は▽課題の重要性▽汎用(はんよう)性▽先進性▽独創性▽効果・影響度--となっている。また、秀逸なアイデアが部分的に含まれているなど、審査委員の印象に残った活動から5点を審査委員特別賞に選んだ。

 発表会では、一次審査で選出された優秀賞10 校と審査委員特別賞5 校が活動発表を行い、最終審査会で2校が大賞に選ばれた。

 大賞となった広島県呉市立広南中学校の「小中一貫で資質・能力育成」は、生徒の思考の流れを「志→準備→挑戦」の軸で貫いたカリキュラムを用いて問題解決を目指す実践事例。2015年度から4年間で「夢や目標を持つ生徒の割合」が68%から94.1%に、「失敗を恐れずに挑戦する生徒の割合」が64.0%から82.3%に増加する成果を挙げたという。荒本礼二教頭は「この機会を与えていただき、感謝したい」と喜びを語った。

 同じく大賞となった滋賀県彦根市立佐和山小学校の「あこがれがつなぐ学校文化」は、児童が上級生にあこがれる気持ちを基に、6年生がリーダーになって学校文化を持続発展させる試みを8年間にわたって続けたところ、そうじや児童会、お互いを大切にする応援など学校独自のよき伝統を作り上げることに成功したという。

 川端清司教諭は「この実践は大きな壁にぶつかったことがあり、その時に滋賀大学教職大学院の学びから新たな知見を得た。これからは自分が周りの先生方のあこがれになるようにがんばっていきたい」とあいさつした。

「あこがれがつなぐ学校文化」をテーマに事例発表する滋賀県彦根市立佐和山小学校の川端清司教諭
「あこがれがつなぐ学校文化」をテーマに事例発表する滋賀県彦根市立佐和山小学校の川端清司教諭

 審査委員を務めた北神正行・国士舘大学教授は「NITS大賞は今回、応募件数が大幅に増え、やっと小さな芽がふくらみ始めた。広南中学校には5年間蓄積してきた研究があり、その精度の高さが評価された。佐和山小学校の発表には、子供に光を当てながら、実践に関わる人たちの思いや願いがあふれていた」と講評した。

 木村泰子・大阪市立大空小学校元校長は「教師が教えてやろうと思っているうちは、子供たちは私たち教員にあこがれを感じないだろうな、と発表を聞いていて思った。教員一人一人がちょっと変わった自分になれたら、こんなに楽しいことはない」と述べ、教員自身の意識改革の重要性を指摘した。

 小宮山利恵子・スタディサプリ教育AI研究所所長(教育新聞特任解説委員)は「発表された内容は、教員を目指す学生の段階で共有されるべき知恵だと思った。教員養成にも生かせたらいい」と話した。

 NITSでは発表内容を近くWEB上で公表し、全国の学校に事例の共有を促す。

◇ ◇ ◇

活動発表を行った優秀賞と審査委員特別賞の事例と発表者は下記の通り(敬称略)。

【優秀賞】

▽The 魅力ある学校づくり~カリ・マネで学校をよりよいものに~ 熊本大学教育学部附属小学校副校長 猿渡徳幸▽小中一貫で資質・能力育成~社会に開かれた教育課程で未来創造~ 広島県呉市立広南中学校教頭 荒本礼二▽働き方改革も授業改善も~改革・改善は誰がヤル?皆でヤル!~ 兵庫県伊丹市立昆陽里小学校教頭 井村明子▽働き方改革の一丁目一番地~勤務時間の正確な記録とデータ活用~ 茨城県古河市立総和北中学校教頭 田村俊之▽「ふるさと学習」~マンネリ化からの脱却を目指して~ 秋田県鹿角市立八幡平中学校教頭 中村史子▽新遠野物語プロジェクト~地域との協働による人材育成~ 岩手県立遠野高校副校長 鈴木徹▽高田メンタープロジェクト~「雑談以上研修未満」で学び合う~ 千葉県柏市立高田小学校教諭 澤田堂樹▽多様な子供を認め合う研修~特別支援教育の視点で高める学校力~ 静岡県藤枝市立藤枝中学校教諭 古川和史▽チーム企画で研修の活性化~プロジェクト型組織の活用を通して~ 茨城県つくば市立竹園東小学校教務主任 永岡範之▽あこがれがつなぐ学校文化~子供の力で発展し続ける学校づくり~ 滋賀県彦根市立佐和山小学校教諭 川端清司

【審査委員特別賞】

▽学び続ける教員集団の育成~ESDとICT、そしてカリマネ~ 愛知県立みあい特別支援学校校長 志賀則彦▽減らして専念!働き方改革~CS の強みを生かした改革の実現~ 新潟県上越市立上下浜小学校校長 笹川隆▽地域と連携した木育の取組~生徒の自己実現を地域と支え合う~ 島根県立石見養護学校教諭 平木健滋▽校務分掌に事務の視点を~事務職員が潤滑剤としての役割を~ 北海道檜山郡江差町立南が丘小学校専門事務主任 伊藤孝祥▽ベテラン教員の資質向上~指標に基づく研修プログラムの開発~ 茨城県教育研修センター教職教育課指導主事 吾妻俊昭

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