「社会通念上は専門職で、労働法制とズレ」 シンポで指摘

「社会通念上は専門職で、労働法制とズレ」 シンポで指摘
「教育の専門性と勤務時間管理」をテーマに実施されたパネルディスカッション
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 「教育の専門性と勤務時間管理」と題した公開シンポジウムが2月22日、都内で開催された。主催は日本スクール・コンプライアンス学会。教員の勤務時間管理をテーマに、研究者や現場教員、弁護士らが意見を交わした。

 はじめに同学会会長を務める日本女子大学の坂田仰教授が「教員の専門性と働き方改革の間にあるジレンマ」と題して問題提起し、「働き方改革は『労働基準法や給特法などの法令順守』と『労働生産性の向上』の2つの目標によって推進されているが、これらが学校現場に落とし込んだ時に矛盾が発生する」と指摘。

 例として、「公立学校の教員には給与月額4%相当の教職調整手当が支給されているが、それは無定量の残業を認めるものではなく、超過する場合は追加支給するのが本筋だ」と語った。

 自発的残業や持ち帰り残業については、「教員の専門性に基づく自律的判断によるものとして、一定程度認められると考えられてきた」とした上で、「幼小中高の教員は、労働法制上では専門職として認められていない。さらに、勤務時間管理が徹底されていないため、始業・終業時刻が明確にされておらず、働き方改革の議論のベースとなるエビデンスがない」と指摘。

 「社会通念上は専門職と捉えられているにもかかわらず、労働法制との間にズレがある」と訴えかけた。

 続くパネルディスカッションでは、川義郎弁護士が小中学校の現状として、「過労死ラインを超える残業が発生している」と指摘。「教委はタイムカードや IC カードの活用などにより、教員の労働時間や業務内容を把握した上で、業務を 1 つ増やしたら 1 つ必ず減らすといった努力をすべきだ」と提言した。

 また、日本女子大学教職教育開発センターの瓦井千尋客員教授は「学校の働き方改革を推進するに当たって教委が国に出した要望では、教職員定数の改善が最も多かった」と紹介し、「勤務実態把握は、働き方改革の手段であって目的ではない」と強調。

 横浜市立本宿中学校の長島和広副校長は現場教員の立場から、「小学校のプログラミング教育必修化やICTの活用に加え、さまざまなガイドラインやマニュアルの増加など、教員の専門性の肥大化が起きている」と述べ、「公教育の持続性を考えれば、スクールカウンセラーの常駐や事務職員の配置といった人材確保が必要になる」と語った。

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