午前8時20分、テレビ会議ツール「Zoom(ズーム)」の画面に、一人、また一人と児童の顔が映し出される――。福岡教育大学附属福岡小学校(坂本憲明校長、児童448人)では4月下旬から、「Zoomで朝の会」を行っている。先月23~24日に2年生で先行的に実施し、27日からは全学年が朝は“登校”している。
5月8日、6年2組では児童36人のうち33人が参加。8時半になると、担任の西島大祐教諭が朝のあいさつを始めた。パソコンやタブレット端末で参加する児童が大半だが、スマートフォンから参加する子もいる。まずはウォーミングアップに「あっち向いてホイ」を3回。児童から笑顔が出てきたところで、一人一人の名前を呼んでいく。
名前を呼ばれた児童は体調と、今日がんばりたいことを一言ずつ発言した。「運動と勉強をがんばりたい」「計画的に行動したい」という声が挙がる中、「新型コロナウイルスの治療に当たっている医療従事者に感謝して、ステイホームする」という声も。
その後、西島教諭から「6年生でがんばりたいこと」というお題が出され、アニメの音楽が流れている間に、児童はそれぞれ紙やホワイトボードに自分の回答を記入。画面越しにその回答を見せ合い、児童同士でリレーのように指名して、がんばりたい理由を聞き合った。最後に連絡事項の伝達などが行われ、朝の会は20分程度で終了した。
西島教諭は「当初は20分間の運営ができるか不安だったが、教諭同士で機能などを教え合ったり、研修したりするうちに、テレビ会議の背景画像や朝の会の内容について新たなアイデアが出るようになった」という。
こうした朝の会は特別支援学級でも行われており、8日は13人のうち11人が参加。担当する特別支援学級主任の藤康宏教諭は「平常時の朝の会と、流れを変えないことを意識している」と話す。その上で、健康観察を兼ねて1人ずつ発言の機会を与えたり、音楽や指体操など動画ならではの活動を行ったりすることで、児童の意識を画面に引き付ける。そして何より、参加したこと自体を褒めることが大切だという。
新型コロナウイルスの流行に伴う一斉休校を受け、同校がこうしたオンライン体制の整備に動き出したのは3月末。最初のステップとして、4月上旬に全学級で、家庭に児童が使用できる端末があるか、Wi-Fi環境があるかを調査した。端末のない家庭には学校保有のタブレットやグーグルから提供を受けたノートパソコンを貸し出した。
さらに、保護者向けに資料を配布してZoomの使い方を丁寧に説明。「保護者からは学校の取り組みに対する協力が得られている」(同校研究部長の齋藤淳教諭)といい、特に低学年や特別支援学級では保護者が朝の会への参加をサポートしている。
特に気を配っているのはセキュリティー面だ。Zoomでの会議に参加するには、IDとパスワードが必要になるが、パスワードは開始直前に配布することで外部への流出を防いでいる。また、家庭の都合などで参加が難しい場合は無理をさせず、後で担任が電話でフォローをするようにしている。
特別支援学級では朝の会に加え、週2回(各20分程度)、オンラインで個別に学習を支援する時間を設けている。特別支援学級では児童によって実態が異なり、通常学級のようにウェブサイトで一律に課題を配布することが難しい。そのため、国語と算数について個人の状況に応じた課題を用意し、週に1度、各家庭に配布する形としている。
同校では同時に、グーグルの学校向けサービス「Google classroom」を利用した連絡や時間割・課題などの提供の準備を進めており、12日からはZoomとGoogle classroomを併用したオンライン授業とサポートを開始する。
児童の集中力が続く時間を考えて、1コマ20分ほどの授業を午前中に4コマ行い、午後は課題への質問や返信などの時間とする。時間帯により参加できない児童がいることも想定し、双方向の授業だけではなく動画を録画して提供するなど、さまざまなツールを活用して児童の学びを支援していくという。