公立学校の教員に休日のまとめ取りを可能とする、1年単位の変形労働時間制の導入に向け、文科省は7月2日開かれた中教審初等中等教育分科会で、制度を導入する場合に各自治体の教育委員会が講ずべき措置を具体的に示した文科大臣指針の案を明らかにした。一般の超過勤務時間に相当する時間外在校等時間の上限時間である「1カ月45時間」「1年間360時間」について、休日のまとめ取りを適用する場合には「1カ月42時間」「1年間320時間」に設定することなどを各教委に求めた。指針は7月中旬、休日のまとめ取りに関する省令とともに公布される。
教員の休日のまとめ取りは、希望する自治体が選択的に導入できる制度で、昨年12月に国会で成立した改正給特法に盛り込まれた。来年4月の改正給特法の施行に合わせて自治体が導入する場合、今年9月に始まる地方議会で関連条例を整備する必要がある。実際の導入は学校単位となり、導入した学校では校長がそれぞれの教員と個別に相談して、休日のまとめ取りを適用するか判断することになる。
改正給特法の成立に当たっては、働き方改革によって教員の在校時間が減ることに伴い、逆に自宅などへの持ち帰り業務時間が増加することがないように求めた国会の附帯決議が行われた。それを踏まえて今年1月に文科大臣指針が策定されており、今回はその指針に休日のまとめ取りに関する部分を加える。
指針では、教員の長時間勤務を改善するため、各教委が講ずべき措置を細かく示している。教育職員が学校教育活動に関する業務を行っている時間として、外形的に把握することができる時間を「在校等時間」とし、勤務時間管理の対象とすることを定めている。在校等時間には、「在校している時間」のほか、「校外において職務として行う研修や児童生徒の引率等の職務に従事している時間」と「各地方公共団体で定めるテレワークの時間」が含まれる。
この在校等時間のうち、労働基準法に定められた勤務時間を超える部分を「時間外在校等時間」と呼び、その上限時間について「1カ月45時間以内」、「1年間360時間以内」としている。教員の在校時間はICTの活用やタイムカードなどで客観的に計測することを求めるとともに、「上限時間まで業務を行うことを推奨する趣旨ではない」と明記されている。
その上で、今回追加した、1年単位の変形労働時間制の導入に関する部分では、夏休みなどの長期休業期間中に休日のまとめ取りをする場合、対象となる期間中、在校等時間の上限時間を「1カ月42時間以内」、「1年間320時間以内」に設定するよう各教委に求めた。▽タイムカードなど客観的な方法による在校等時間の把握▽部活動ガイドラインの順守▽正規の勤務時間を超える割り振りは、長期休業期間中の休日のまとめ取りに配慮する――といった措置を講じることも定めている。
中教審初等中等教育分科会の審議では、出席した委員から「学校現場が分かりやすいように制度を説明する必要がある」などの指摘が出た。これに対し、文科省は「パンフレットの作成などを通して、丁寧に説明していきたい」と応じた。
休日のまとめ取りに関する文科大臣指針の案文は次の通り。