文科省は7月7日、教育データの利活用に関する有識者会議の初会合で、学習履歴(スタディ・ログ)など初等中等教育における教育データの標準化について、検討の方向性を示した素案を提示した。同省では、ポストコロナ段階の学校教育の姿として、対面指導とオンラインのハイブリッド化によって個別最適化されたきめ細かい指導を実現する考えを打ち出しており、GIGAスクール構想による1人1台端末の整備を踏まえ、個別最適化学習に必要とされる教育データの利活用に本格的に踏み出す構え。
素案では、まず、GIGAスクール構想が年度内の実施に前倒しされたことを受け、教育データの標準化についても、今年度中に一定の結論を出すことを明記した。
その上で、議論の目的として「Pedagogy First, Technology Second(教育が第一、テクノロジーはその次)」を掲げ、「多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、個別最適化された学びの実現や、学校現場での『主体的・対話的で深い学び』に向かうためのデータ活用となることが実現できるためデータの標準化を行う」と記した。
同時に議論の方向性として「教育データの相互運用性」を置き、「これまでサービスや媒体に依存していたわが国の教育データ活用を、サービスや媒体によらずに相互に交換、蓄積、分析が可能となるようデータの標準化を行う」と示した。
こうした目的と方向性を踏まえ、教育データ標準の枠組みとして、なるべく国際標準規格(グローバル・スタンダード)の活用を図ることを打ち出した。教科書だけでなく、民間の教材や問題集、さまざまな外部機関と連携しやすいように、教育データ標準の公表と共有を進めることも強調した。
これに先立ち、会議では、日々の学習活動によって生じる教育データの利活用として、3つのイメージを挙げた。
第1は「個人の活用による学習などのサポート」。「小・中・高の学校段階や、使用するサービス・ソフトに関わらず、学習などの記録をデジタルで記録することで、児童生徒自らの振り返りなどに活用する」とした。
第2は「学校教員などの指導改善」。「これまでの記録などを活用することで、個別最適な学習指導・生徒指導を実現」と説明した。
第3は「新たな知見の創出・政策への反映」。「蓄積された教育ビッグデータを分析することで、教授法・学習法などの新たな知見の創出や、政策への反映・EBPMの推進」とした。EBPMはエビデンスに基づく政策形成を意味する。大学や研究機関で教育データを活用する際には、データは匿名加工するとしている。
座長の堀田龍也・東北大大学院教授は「GIGAスクール構想は非常に大きな転換点になる。いまはハードウエアの導入で各地の教育委員会はバタバタしているが、これはたちまち学習者IDなど次の議論になる。教育データ標準は、他のいろいろなデータの標準化とあわせて、グローバルスタンダードを目指していくべきだ。同時に、匿名化をうまくやらないと、ビッグデータにならない。さらにはデータの所有権の問題もある。所有権は個人に帰属するが、それをはっきりさせないと、自分のデータをうまく開示して、例えば塾などの民間の教育環境でさらなる手厚い指導を受けることも実現しない」と述べ、個別教育データの利活用に向けて早急に道筋を付ける必要性を強調した。
文科省が示した「教育データの利活用の主な論点」は次の通り。