教育学の分野における「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準」が8月18日、日本学術会議から公表された。教育学は人間による教育という営みについて、規範的、実証的、実践的にアプローチする学問であるとし、学問としての教育学と教員養成の関係などを整理した。
「参照基準」は、日本学術会議が大学教育で各学問分野の特性や学生が身に付けるべき素養、学習方法などを示したもので、現在、32分野が公表されている。
この教育学分野の参照基準では、「『よりよい教育』を目指すことは、単に技術的・実践的な課題解決だけでなく、人間や社会についての科学的知見と価値・理想についての考察を必要とする」など、教育学の特性を列挙。
その上で、学士課程で目指すべき能力として▽教育事象について批判的に考察できる▽特定の教育的営みに関与し、その部分あるいは全体を構想・具現化できる▽教育事象を考察したり、教育的営みに関与したりする際に、効果的にコミュニケーションを行ったり、協働したりできる▽生涯にわたって教育について学び続けるための基礎を身に付けられる――と整理した。
さらに、教育学はその性格から、知見を生かしてよりよい教育の在り方を模索する市民性の涵養(かんよう)が求められるとし、さまざまな分野や文化と往還しながら、市民性を備えたプロフェッショナルの育成が求められていると強調した。
学問としての教育学と教員養成の関係を巡っては、教育学において、教員養成は本来的な要素として位置付けられ、理論と実践を包括する最先端の教育学が教員養成において適切に活用されていくことが望ましいとし、文科省が先行して定めた教員養成での資質・能力を示した「教職課程コアカリキュラム」についても、今後の改訂では、この参照基準を踏まえるよう求めた。