発達障害のある人やその家族の円滑な支援につなげるため、日本学術会議は8月31日、保健、医療、福祉機関などと学校との連携の在り方についてまとめた提言を公表した。発達障害は児童虐待のリスク要因となりやすいことから、乳幼児期からの子育て支援が重要だと強調。発達障害は不安やうつ、睡眠障害などの症状を伴う場合が大半であることから、学校では、成人後を見据えたメンタルヘルスへの対応を考慮に入れた支援が必要だとした。
提言によると、発達障害を巡っては、診断基準の変化や社会の認知、診断数の増加などにより、現在では10%もの高頻度で子供が発達障害だと推定され、少数の専門医療機関では対応できないレベルになっている。
さらに、まだ支援を受けていない発達障害児も多数存在し、その背景として、発達障害は不安やうつ、睡眠障害などの症状を合併していることが多いため、発達障害があっても、発見されにくくなっているとも指摘した。
こうした課題を踏まえ、特にメンタルヘルス対応を考慮した成育医療の整備が必要だとし、地域の保健、医療、福祉の専門家のバックアップ下で、学校がさまざまな機関と連携しながら支援することや、心の健康教育の積極的な展開によって、生涯にわたって心身の健康を維持できるようにすべきだと提言した。
また、発達障害のある子供の養育は保護者の心理的・物理的な負担が大きく、児童虐待のリスクとなりうることから、乳幼児期からの早期支援が重要だとし、子供と保護者の双方にアプローチする介入プログラムの開発や、愛着と発達の統合的視点を持った専門家を育成する教育体制整備の必要性なども示した。