国際教育到達度評価学会(IEA)は12月8日、小学4年生と中学2年生の児童生徒を対象に、昨年2月から3月にかけて実施した「国際数学・理科教育動向調査」(TIMSS2019)の結果を公表した。小4の算数・理科、中2の数学・理科の平均得点を4年前の前回調査と比較すると、日本は中2の数学で得点が上昇した一方、小4の理科で得点を下げた。中2の理科と小4の算数の得点は、ほぼ横ばいだった。順位は4教科とも5位以内に入り、これまでの調査と同様、国際的に高い水準を維持した。また、児童生徒の学習意欲をみると、「勉強は楽しい」との答えが4教科全てで増加したものの、小4の理科以外では、国際平均を下回った。
TIMSSは児童生徒の算数・数学、理科の教育到達度を国際的な尺度で測定し、学習環境などの諸要因との関係を組織的に研究する目的で、1995年から4年ごとに実施されている。2019年の調査では、小4は58カ国・地域、中2は39カ国・地域が参加した。日本からは小4が147校約4200人、中2は142校約4400人が無作為で選ばれて参加した。
実施方式には今回から従来の筆記型に加えて、CBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)が選択できるようになった。日本は筆記型で参加したが、シンガポール、香港、韓国、台湾、フィンランドなどの上位国はいずれもCBTでの参加を選択した。
調査では、初回となった1995年の国際平均を500点として基準値に設定し、変化を比較できるように調整されている。
その結果、児童生徒の学力では、小4算数は593点(前回593点)で得点に変化はなく、順位は前回と同じく5位。中2数学は594点(同586点)と8点上がり、5位から4位に上昇した=グラフ1参照。小4の理科は562点(同569点)で7点下がり、3位から4位に下落した。中2の理科は570点(同571点)で1点下がり、2位から3位に順位を落とした=グラフ2参照。
参加国の順位を平均得点でみると、小4の算数・理科、中2の数学・理科の全てで、前回の1995年調査と同じくシンガポールが1位となった。2位は小4の算数が香港、小4の理科が韓国、中2の数学と理科が台湾。3位は小4の算数と中2の数学が韓国、小4の理科がロシア、中2の理科が日本だった=表参照。
また、算数・数学と理科に対する児童生徒の意識を把握するため、質問紙による調査も同時に行っている。
このうち学習意欲を示す「勉強は楽しい」と答えた児童生徒の割合をみると、日本は小4の算数・理科、中2の数学・理科の全てで、前回よりも「勉強は楽しい」と答えた割合が上昇しており、学習意欲の改善がみられた。しかしながら、国際平均と比べると、小4の理科を除いて、学習意欲を示す割合は低かった。
具体的には、「勉強は楽しい」と答えた児童生徒は、小4の算数が77%(国際平均84%)、中2の数学が56%(同70%)、小4の理科が92%(同86%)、中2の理科は70%(同81%)だった=グラフ3・4参照。
文科省では、児童生徒の学力や学習意欲の向上を図るためには、「新学習指導要領の着実な実施が必要」と強調。「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善や、言語能力、情報活用能力育成のための指導の充実を図っていく」と説明している。
同省は、新学習指導要領を踏まえ、理数教育を充実するアプローチとして、次の項目を挙げた。