GIGAスクール構想が4月から始まるのを前に、萩生田光一文科相と河野太郎行政改革相は3月29日、共同で記者会見し、「教育現場のオンライン教育の活用」に関する取り組みを公表した。小中学校での1人1台端末の実現というICTの環境整備を生かし、各学校で創意工夫しながら、児童生徒の発達の段階に応じたオンライン教育を有効活用することを掲げ、こうした取り組みを通して質の高い教育の実現を目指す姿勢を強調した。
会見の中で、萩生田文科相は「1人1台端末の実現を控え、個別最適な学びと協働的な学びの実現に向けて、学校現場の創意工夫が十分に発揮されるよう後押しするための規定を改めて示すとともに、児童生徒の安全安心が保障されるよう、必要な共通認識を明確にした」と今回まとめた取り組みについて説明。
「オンライン教育を進める上で抑えるべきポイントは、児童生徒と教員が直接触れ合う、対面が基本だということ。その上で個々の授業については、なるべく学校現場の創意工夫の下、オンライン教育を有効活用することで、質の高い教育が前進するよう現場をしっかり後押ししたい」と強調した。
今回まとめた取り組みでは、最初にオンライン活用による「教師が児童生徒に寄り添う質の高い教育の実現」を掲げ、現場の創意工夫で同時双方向やデジタル教材等を活用し、児童生徒の状況に応じた質の高い教育が行われるようにするとしている。具体的には学習が遅れている児童生徒により重点的に指導を行い、学習進度の早い児童生徒には主体的に発展的な学習に取り組む機会を提供するなどとしている。
また、不登校の児童生徒や病気療養児の学びの保障について、自宅や病室でのオンライン学習について一定の要件の下、出席扱いとし、学習成果を評価に反映するとしている。
さらに学習者用デジタル教科書の普及促進を図ることや、非常時の学びの保障についても盛り込んだ。感染症や災害の発生などで学校に登校できない場合は、オンライン学習を含む自宅での学習成果を学習評価に反映できることや、一定の要件の下で対面での再指導を不要とするなど、コロナ禍で特例的に実施した取り扱いと同様の扱いを可能とするとしている。
萩生田文科相は「デジタルはいろいろな可能性を秘めている。子供たちの発達段階に合わせて進める中で、小学校ではおのずと小学校のルールが出来てくると思うので、いい取り組みは直ちに横展開したい。ただ、いきなりフルスペックでやろうとすると想定しなかった事故や課題が出てくると思うので、安全性も含めて確認しながらまずスモールステップで進んでいきたい」と述べた。
現状の学校教育法施行規則では、小中学校の授業は原則として対面を想定している。ただ、昨年春の新型コロナウイルス感染拡大に伴う臨時休校で、児童生徒の学びの保障が叫ばれる中で文科省は、教師による同時双方向型のオンライン授業を含む家庭学習の成果を学習評価に反映できるとする通知を4月に発出。休校が長期化するにつれ、小中学校でも学校や教員と家庭をつなぐオンライン授業の実践例も出てきた。
昨年9月23日に開かれた「デジタル改革関係閣僚会議」では、菅義偉首相が「デジタル教育などの規制緩和」の推進を指示。規制改革推進会議でも、「オンライン教育、オンライン診療などの時限的措置の恒久化」が今後の審議事項に盛り込まれ、菅首相が今年度中に結論を出すよう指示していた。
こうした中で同月、萩生田文科相、平井卓也デジタル相、河野行革相が3閣僚会合を開き、オンライン授業の在り方について議論。平井デジタル相が家庭を含めたオンライン学習を授業時数にカウントするよう求めたのに対し、萩生田文科相は「学校に来なくても全ての授業がオンラインで代替できるというのは、今の段階では考えていない」と反論した。
こうした議論を受けて文科省は、高校について、遠隔授業は36単位を上限とする要件や、受信側に教員を配置する要件を見直す考えを示した。一方で義務教育段階については、教師によるきめ細かい指導を重視し、オンライン家庭学習は感染症や災害など、非常時に限った措置として位置付ける方針を決めた。
こうした方針を踏まえ今年2月には、昨年4月の通知を踏襲する形で、オンラインを活用した家庭学習を非常時に限った「学びの保障」の措置として恒久化するという通知を、全国の教育委員会に向けて発出。平時の備えを重視することや、オンライン授業の内容を指導要録に記録することを追記した上で、来年度より実施するとした。
①学校の臨時休業期間中のオンラインを活用した学習を含む自宅等での学習の成果を学習評価へ反映できること
②一定の要件の下で対面での再指導を不要とすること