コロナ禍の影響が続くとみられる来春の大学入試について、文科省は6月4日、2022年度の大学入学者選抜実施要項を公表し、大学入学共通テストの本試験を来年1月15、16日に実施することを明らかにした。追試験は2週間後の同29、30日に行う。今春、特例的に行った「第2日程」は設定しない。追試験の会場数や設置場所については、出願期間となる今年秋までに決める。また、大学側に対して、個別試験の中止など入試方法の変更は受験生に不利益を与えないよう、7月末までに決定することを要請するとともに、ワクチン接種の有無を受験の要件にしないことも求めた。
追試験は、以前の大学入試センター試験では本試験の1週間後に行われてきたが、来春の共通テストでは1週間遅らせて本試験の2週間後に設定された。一方、今春、全ての都道府県で会場を準備した第2日程がなくなり、例年通りの2回に戻ることになった。
こうした判断を行った理由について、萩生田光一文科相は同日の閣議後会見で、「来年の受験時期にコロナがどう収束しているか、まだ先行きが見えないところがある。2週間の日数は、濃厚接触者などに指定された方に対してチャンスを確保する意味で、必要な時間軸だと判断したので、2週間後の追試験にした」と説明。
追試験の会場を全ての都道府県に準備するかどうかについては「(今春の)第2日程で全ての都道府県に会場を設置したのは安心感があって高い評価を受けたが、他方、受験生よりも現場の準備の人数が多かった試験会場などもあった。来春については、状況を見ながら柔軟に対応したい。受験生のニーズがあれば、会場はできる限り近いところで、と考えている」と述べた。文科省では、追試験の会場について、共通テストの出願が始まる今年秋(昨年の出願期間は9月28日から10月8日)までに決めるとしている。
また、今春の大学入試の個別試験で、募集要項の公表後に選抜方法などを急きょ見直す動きが相次いだことから、大学入学者選抜実施要項では、個別試験の実施教科・科目、小論文の出題や面接の実施など入学者選抜の基本的な事項については、7月31日までに発表し、それ以降は受験生に不利益を与える恐れのある変更は行わないよう明記した。今春の個別試験ではコロナ禍の影響で、募集要項を公表した後に、個別試験を取りやめて共通テストの結果だけで合否判定したり、対面での面接をオンラインに切り替えたり、試験時間を短縮するなどの変更を行った大学があった。
同省では、試験場の感染症対策をまとめた試験実施のガイドラインも公表。その中で▽試験日の2週間程度前から発熱やせきなどの症状がある受験生は、あらかじめ医療機関での受診を行う▽大学入試センターや各大学は、新型コロナウイルス感染症に罹患(りかん)していないことの証明や、新型コロナウイルスに対するワクチンの接種を、受験要件にしないこと--を求めた。