コロナ禍が高校生の就活直撃 求人取り消しに進路変更も

コロナ禍が高校生の就活直撃 求人取り消しに進路変更も
高校生の就職内定実態調査について会見する全教の山田中央執行委員
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 今年3月に卒業した高校生を対象にした就職内定実態調査で、コロナ禍の影響で求人の取り消しが急増したのに加え、経済的な理由で進学をあきらめて就職に切り替えるケースが相次いでいたことが6月30日、分かった。調査を行った全日本教職員組合(全教)と全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)は「生徒が早くから就職活動を進める中で、求人取り消しが急増したのは問題だ。就職保障のための求人確保や雇用創出を、国に求めていきたい」と話し、近く文科省や厚労省に要望することにしている

 同調査は全教と全国私教連が構成組織を通じ、今年2月17日から3月25日にかけて、3月に卒業予定の高校生を対象に各校に調査用紙を送付する形式で行い、26道府県の421校から回答を得た(全国の高校の8.6%)。回答した公立・私立高校や障害児学校高等部を合わせた卒業予定者は5万3272人で、就職希望者は1万3643人。

 このうち企業からの求人については、主に飲食業やホテル業、観光業などを中心に、求人が減少した・無くなったというケースが目立ち、求人取り消しは145件(前年度2件)と急増した。「サービス業、特に接客などが激減した」(埼玉県)、「応募後にコロナ禍による業績不振で採用できないと連絡が来た」(宮城県)、「校内選考終了後、求人の取り消しの連絡が1件あった。コロナの影響が理由だった」(和歌山県)といった声が寄せられた。

 進路変更については、民間の就職試験や公務員試験が不合格となったため、進学に変更したとの報告が多かった。昨年度の就職試験の開始が例年より1カ月後ろ倒しになり、他の進路との日程が窮屈になったことや、希望する求人の減少で進学に変更したと考えられるという。また、経済的理由で進学できなくなり、就職へ切り替えたというケースも多かった。具体的な報告としては「入学金のメドが立たなくなり就職に変更」(神奈川県)、「自営業でコロナの影響で進学させられなくなり、1月から就活」(兵庫県)といった声が寄せられた。

 既卒者や在校生の状況についても質問したところ、昨年4月以前に就職したが、コロナ禍の影響で会社が休業・廃業したケースや、残業手当がなくなり離職したケースが報告された。両団体は就職後の早期離職率の高さという課題があり、厳しい雇用情勢への抜本的な対策が求められると指摘している。

 さらに就職内定率が全体で97.3%であるのに対して、定時制・通信制高校では87.2%と低くなっているほか、アルバイトなどの不安定雇用率が全体で1.3%である中、障害児学校高等部は39.7%と非常に高く、各学校の就職支援の体制拡充を求めている。

 こうした結果について、全教の山田真平中央執行委員は「高校生は2年から職業選択などの準備を進めており、求人取り消しが急増したことで、かなり影響を受けたとみられる。また、コロナ禍で進学できないケースがあることも、就学保障の観点から問題だ」と指摘。近く文科省と厚労省に対し、▽就職未決定者や就職希望者の就職保障のための、求人確保・雇用創出に取り組むこと▽高校・大学・ハローワークに、正規の就職支援員などを大幅に増員すること▽高校生・大学生の内定取り消しや採用待機の実態把握に努め、関係機関と連携して万全の対策を取ること――などを要望するという。

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