「推進法」の効果か 児童生徒のいじめ経験率が減少

「推進法」の効果か 児童生徒のいじめ経験率が減少
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 いじめの実態について、同一地域で定点観測的に行っている国立教育政策研究所(国研)の追跡調査結果が7月16日発表され、いじめ防止対策推進法が施行された2013年以降、いじめの認知件数は増加傾向にあるものの、子供たちがいじめの加害・被害を経験したと答えた割合は減少していることが分かった。国研では「推進法によって学校の姿勢や教職員の意識が変化した結果、認知件数は増えたが、実際の児童生徒たちのいじめが減ったと考えられるのではないか」と分析している。

 国研は1998年から同一地域で4000人以上の児童生徒(小学4年生以上)を対象に毎年2回、いじめの実態調査を実施し、3年ごとに結果を公表している。今回は2016~18年の調査結果をまとめ、いじめ防止対策推進法が施行される前の10~12年のデータなどと比較・分析した。

 調査結果によると、「暴力を伴わない仲間外れや無視などのいじめ」について、小学6年生が3年間で経験したと答えた割合は、12年度は加害経験率が86%、被害経験率が87%だった。しかし6年後の18年度の調査では、加害経験率が69%、被害経験率が80%と、いずれも減少したことが分かった(グラフ参照)。

 同じように中学3年生が「暴力を伴わない仲間外れや無視などのいじめ」を経験した割合も、18年度の調査では6年前に比べて加害経験率が8ポイント、被害経験率が3ポイント減少した。

 さらに「暴力を伴ういじめ」についても2つの調査結果を比較したところ、小学6年生、中学3年生とも、12年度調査に比べて加害経験率、被害経験率は全て減少していた。

 一方、学校から文科省に報告されている、いじめの認知件数は増加し続けており、文科省が毎年行っている「児童生徒の問題行動等調査」によると、19年度は全国で61万2496件に上り、前の年度より12%増加した。

 こうした調査結果について国研は、いじめ防止対策推進法の施行で教職員の意識が変化し、学校が積極的に認知しようとして認知件数が増加した一方、教職員のいじめに関する指導の強化によって児童生徒が仲間をいじめたり、被害に遭ったりするケースが減ったのではないかと分析。

 「大半の教職員の意識が変わるまでには時間がかかり、推進法の施行からやや遅れて成果が表れてきたとも考えられる。認知件数の増加が、教職員の意識の変化によるものであるなら、いじめの発生件数の減少につながると期待できるのではないか」とコメントしている。

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