外国人学校の保健衛生環境の在り方を検討してきた文科省の有識者会議は12月22日、最終会合を開き、外国人学校の保健衛生環境の整備を支援するガイドラインの策定などを盛り込んだ最終取りまとめを行った。外国人の子供が学ぶ施設として外国人学校が一定の役割を果たしていることを明示した上で、外国人学校への情報発信などと一元化するプラットフォームの整備なども打ち出した。同省は近く最終取りまとめをホームページで公表するとともに、ガイドライン策定に向けた新たな組織を設置する方針。
「外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議」は、新型コロナウイルスの感染が広がる中、外国人学校などに通う子供たちの健康確保に向けた支援策などを検討するために発足した。ヒアリングや現地調査なども交えて7回にわたり議論が重ねられ、同日、最終取りまとめ案が示された。
最終取りまとめ案では、外国人学校へのアンケート調査や現地調査などを通じて浮かび上がった課題として、▽外国人学校に通う子供の把握に関する課題▽保健衛生環境対策を講じる際の課題▽支援体制に関する課題――の3つを挙げた。具体的には、健康上のリスクが比較的高い可能性がある中で、財政面の限界から保健室設置や保健衛生の専門職の配置を義務付けるのは負担が大き過ぎることや、保護者が情報を入手しにくい状況に置かれている場合があること、さらに保健所などに情報提供を求めても対応してもらえない場合などもあり、さまざまな視点から支援を考える必要があると指摘した。
その上で今後の方向性として、適切な情報発信に向けて、外国人学校に対する全国的な情報発信の窓口となり、保健衛生対策に関する情報を一元的に発信することのできる多言語対応の「外国人学校プラットフォーム」を整備し、適切な情報発信に努めるべきと提言している。
また、外国人学校が外国人の子供の学びに一定の役割を果たしていることを明示した上で、認可外施設も活用可能な外国人学校向けの保健衛生に関するガイドラインを策定することが必要だと指摘し、具体的なガイドラインの在り方について今後検討を進めていくべきだと強調。さらにガイドラインを示すだけでは各校が継続して取り組むことは難しいことから、自治体を含む関係機関を対象とした広報や研修などを通じて、ガイドラインの活用を促すことも有効であるとした。
最終取りまとめ案について、倉橋徒夢委員(在日ブラジル学校協議会副理事長)は「外国人学校が子供の学びに一定の役割を果たしていると追記されたことはありがたい。ただ、ブラジル人学校では人と物、お金が不足しており、保健衛生環境まで手が回らないという現状も理解してほしい」と述べた。
日本で暮らす外国人の子供などを支援する田中宝紀委員(青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者)は「プラットフォーム事業は保健衛生環境整備に向けた推進力になると思う。具体的に私たちも動きたいと思うので、今後、現場がどう動いていけばいいのかロードマップのようなものも示してもらえるとありがたい」と述べた。
最終取りまとめの文言修正は佐藤郡衛座長(明治大学特任教授)に一任され、文科省のホームページで公表後は、各自治体の外国人学校への支援などに活用される。また、文科省はガイドライン策定に向けて新たな組織を設置するほか、来年度に外国人学校を支援するプラットフォーム事業を立ち上げる準備を進める方針。