ウクライナ情勢に伴う物価上昇を受け、政府は4月26日、関係閣僚会議を開き、ガソリン価格の高騰を抑える補助金や低所得の子育て世帯に対する現金給付などを盛り込んだ原油価格・物価高騰等総合緊急対策を決定した。学校関連では、保護者が負担している給食費の値上げを回避するために学校給食への支援を行う。また、電気代の値上がりを踏まえ、各自治体が負担している学校の冷暖房費への支援を打ち出した。記者会見した岸田文雄首相は「原油価格の高騰が、コロナ禍からの社会経済活動の回復の妨げになることは、何としても防がなければならない」と強調した。政府は今国会中に2022年度補正予算案を2.7兆円規模で編成。民間資金を含めた総合緊急対策の事業規模は13.2兆円としている。
総合緊急対策は、4つの柱で構成されている。第1の柱は原油価格の高騰への対応。燃料油への価格対策では、4月まで1リットル当たり25円を上限に補塡(ほてん)を行い、レギュラーガソリンの基準価格を172円程度に抑えてきた。これに追加して、今回の対策では今年9月までの5カ月分として、石油元売り向けに約1.5兆円規模の新たな補助制度を設ける。これによって補填の上限を35円とし、レギュラーガソリンの基準価格を168円に引き下げる。
岸田首相は「仮にガソリン価格が200円を超える事態になっても、市中のガソリンスタンドでの価格は当面、168円程度の水準に抑制する」と明言。さらに今後、原油価格が前例のない水準まで高騰し、35円を超えて補填が必要になった場合でも、価格上昇分の2分の1を支援して国内価格の上昇を抑制する方針も示した。
第2の柱は、エネルギー、原材料、食料などの安定供給対策。省エネやクリーンエネルギーの利用をいっそう進めるほか、ロシアやウクライナの輸入に頼っていた半導体原料や、パラジウムなど産業用原材料については、調達先の多様化によって経済安全保障の強化を図る。
食料などの価格上昇について、岸田首相は「家計にとって重大な問題」として、輸入小麦の価格上昇への対策を説明。輸入小麦は政府が買い付けて国内の製粉会社に売り渡す仕組みになっていることを踏まえ、「ウクライナ情勢で小麦の国際価格は1割以上、足元で上昇しているが、9月までの間、政府の販売価格を急騰する前の水準に据え置く」と表明した。輸入小麦から国産の米や米粉、国産小麦への切り替えや、飼料価格の高騰に対する支援も行う。
第3の柱は中小企業対策。政府系金融機関によるセーフティーネット貸し付けの金利引き下げや、実質無利子・無担保融資を9月末まで延長することを盛り込んだ。
第4の柱となるのが、コロナ禍の物価高騰に直面する生活困窮者への支援。緊急小口資金等特例貸し付けなど生活困窮者支援策の申請期限を延長するとともに、低所得の子育て世帯に対し、子供1人当たり5万円の給付金をプッシュ型で支給する。岸田首相は「生活を守るセーフティーネットを強化する」と述べた。
地方自治体がそれぞれ行っている生活困窮者への支援や、農林水産事業者や中小企業者への支援についても、地方創生臨時交付金を活用して国が財政面で支えていくことを表明した。
学校関連では、総合緊急対策の中に、保護者が負担している給食費の値上げを回避するため、学校給食への支援を盛り込んだ。新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を積み増し、給食の原材料費の値上がりに直面している地方自治体を支援する。積み増された臨時交付金については、各自治体が他の目的に使わず、確実に学校給食への支援に充当されるよう、文科省が近く各自治体に要請する。岸田首相は「学校給食費の負担軽減に向けた自治体・教育委員会の取り組みをしっかり後押しする」と説明した。
また、エネルギー価格の高騰に伴う電気代の値上がりを踏まえ、各自治体が負担している学校の冷暖房費に対する支援を打ち出した。公立学校の電気代や水道代は、学校設置者である各自治体が負担するため、冷暖房費の支援は地方交付税によって自治体に交付する。