気温や湿度の上昇に伴い、熱中症によって救急搬送される生徒が増えているとして、文科省は6月10日、体育の授業、運動部の部活動、登下校の際には、熱中症対策を優先してマスクを外すように指導を徹底することを求め、都道府県の教育委員会などに事務連絡で改めて周知した。末松信介文科相は同日の閣議後会見で、「熱中症によって多くの生徒が救急搬送される事案が複数発生しており、非常に憂慮している。熱中症対策としてメリハリのあるマスクの取り扱いを徹底するようにお願いしたい」と述べ、学校現場や児童生徒、保護者に理解を求めた。
同日発出された事務連絡では、学校現場における熱中症対策とマスクの取り扱いについて、3つのポイントを強調した。
まず第1として、熱中症が命に関わる重大な問題であることを認識した上で、児童生徒に熱中症の危険性を適切に指導するとともに、保護者に対しても理解や協力を求めることを挙げた。
第2に、マスクの着用が不要な場面の例として、体育の授業、運動部活動の活動中、登下校時を取り上げ、これらの場面は「特に熱中症のリスクが高い」として、熱中症対策を優先し、児童生徒に対してマスクを外すよう指導することを強調した。
第3では、マスクを着用しない場面では「できるだけ距離を空ける」「近距離での会話を控える」「屋内の体育館などでは常時換気など換気を徹底する」といった工夫を検討し、必要な対応を取るよう求めた。
また、児童生徒がマスクの着用を希望する場合については、「適切な配慮が必要」としつつも、「その場合にも、熱中症対策を適切に講じることが不可欠」と明記した。
こうしたマスクの取り扱いについて、文科省は学校のコロナ対策のガイドラインとなる衛生管理マニュアルにこれまでも盛り込んできた。最近では5月24日の事務連絡で、体育の授業や運動部の部活動では「プールや体育館を含めてマスクの着用は必要ない」などと具体的に説明し、学校現場に周知を図っている。
それでもマスクを着用して熱中症によって救急搬送される生徒が出ている現状について、末松文科相は「マスクの着用が不要とした場面においても、児童生徒がマスクを着用している例もあるということは承知している。長期にわたるコロナ禍の中で、感染への不安や周囲の目など、さまざまな理由からマスクの着用を希望する児童生徒や保護者も少なくない。一方、熱中症は命に直結する重大な問題。その危険性について適切に理解していただく必要があると考えている」と説明。
「感染症対策は絶対的なものであるけれども、それ以上に、マスクによる熱中症は即、命を落としかねない。今までずっとマスクをしてきたので児童生徒が外したがらないとか、保護者の方が気になると言っても、そこのところは常識的に現場あるいは地域の事情を踏まえて判断してほしい。その上で、特に体育の授業とか、登下校中はマスクを外すべしというのが文科省の考え。徹底したい」と力を込め、学校における熱中症対策の重要性を強調した。