文科省は6月13日までに、不登校の実態把握や今後の取り組みの方向性を議論した調査研究協力者会議の報告書を取りまとめ、都道府県の教育委員会などに通知した。報告書では、不登校児童生徒の増加に歯止めがかからない中、「個々の不登校児童生徒の状況を適切に把握し、多様な支援を実施することが必要」と強調。重点的に実施すべき施策の方向性について「誰一人取り残されない学校づくり」「不登校傾向のある児童生徒に関する支援ニーズの早期把握」「不登校児童生徒の多様な教育機会の確保」「不登校児童生徒の社会的自立を目指した中長期的支援」と4つの柱に整理し、全児童生徒を対象としたスクリーニングの実施や不登校特例校設置の推進、フリースクールなど民間団体との連携--など取り組むべき具体策を示している。
通知は6月10日付。「不登校に関する調査研究協力者会議」(座長:野田正人立命館大学大学院特任教授)の報告書の内容を説明しながら、不登校児童生徒への支援のさらなる取り組みを学校設置者である各教委に促している。
報告書ではまず、2020年度の小中学校における不登校児童生徒数が調査開始以来最多の19万6127人となる一方、不登校児童生徒本人や保護者へのアンケート調査では「先生のこと」「身体の不調」「生活リズムの乱れ」「友達のこと」がそれぞれ3割程度を占め、不登校児童生徒の背景や支援ニーズが多様になっていることを指摘。不登校を早期に把握して適切な支援につなげることが必要だとするとともに、「経験等により得られた特定の指導・支援方法が適切な場合もあれば、個々の児童生徒の状況によっては適さない場合もある」として、支援の多様性が求められていることを強調した。
これを受け、今後重点的に実施すべき施策の方向性を4つの柱に整理。第1の「誰一人取り残されない学校づくり」では、教育機会確保法と基本指針の学校現場への周知・浸透に向けた広報・啓発資料の作成や教員研修の実施、養護教諭やスクールカウンセラー(SC)を活用した心の健康の保持に関する教育の実施などの取り組みを求めた。
第2の柱となる「不登校傾向のある児童生徒に関する支援ニーズの早期把握」では、全児童生徒を対象としたスクリーニングの実施や、気になる事例を学級担任や養護教諭、スクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)が洗い出すスクリーニング会議の実施、それによって把握した児童生徒のアセスメントや具体的な支援につなげていくためのケース会議の開催などを行い、これらを「有機的につなげていき、学校の取り組みとして機能させていくことが有効である」と指摘。課題を把握した児童生徒に対する「児童生徒理解・支援シート」を活用した支援策の策定などにつなげることを具体策として示している。また、「ICTを活用することでこれまで見過ごされていた児童生徒の変化に気付くきっかけになる」として、GIGAスクール構想による1人1台端末を活用した早期発見にも積極的に取り組むことを促した。
3つ目の柱である「不登校児童生徒の多様な教育機会の確保」では、都道府県単位の広域を対象とした不登校特例校の設置、「不登校児童生徒支援協議会」の設置を通じた学校や教委とフリースクールなど民間団体との連携促進、自宅におけるICTを活用した不登校児童生徒の学習状況を把握して出席扱いにつなげていくための調査研究--などを取り組むべき具体策として挙げている。
第4の柱となる「不登校児童生徒の社会的自立を目指した中長期的支援」では、▽教員養成段階における教員の教育相談スキルの向上▽スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーによるオンラインを活用した教育相談の充実▽保護者を視野に入れた家庭教育支援の充実--などを列挙した。
これらに加えて、通知では、教育機会確保法に基づく基本方針を受け、学校外における学習活動や自宅におけるICTを活用した学習活動について、指導要録上の出席扱いとなる制度があることに言及。「校長を含め教職員への理解が進むよう、研修等において周知徹底を図」るよう、改めて求めた。