コロナ禍で減少した外国人留学生数、日本人の海外留学生数を回復させようと、文科省は7月26日、高等教育を軸にしたグローバル政策の方向性を取りまとめた。今後5年をめどとして双方をコロナ禍前の水準に戻すことなどを目標に、①戦略的な外国人留学生の確保②産学官あげてのグローバル人材育成③大学等の真のグローバル化を進める基盤・ルールの整備――に取り組む。末松信介文科相は同日の閣議後会見で、「停滞した交流を一気に打開するために、リセットするくらいどんどん進めていきたい」と意気込んだ。
日本学生支援機構によると、2020年度の日本人留学生は1487人で、18年度の11万5146人に比べ、98.6%の減少。外国人留学生の受け入れも21年度は24万2444人で、19年度の31万2214人と比べ、2割以上減少した。加えて、外国人留学生の就職率も20年度は39.9%と19年度の47.6%に比べ減少するなど、学生の国際交流は新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きな打撃を受けた。
会見で末松文科相は「学生の国際交流はコロナ禍で深刻な影響を受けた一方、外国人留学生は希望者に対して相当数が入国できている。日本人の海外留学についても、徐々に再開に向けた準備が進められている。国際的な学生交流の回復の兆しが見えてきた中で、立て直しに向けた今後の政策の方向性を示す必要があった」と取りまとめた理由を説明した。
目標・施策の方向性として、留学生の回復のほかに、▽優秀な外国人留学生を呼び込み、企業・地域などに定着▽企業、地方自治体の参画と、段階に応じた海外留学支援を推進▽国内外の基盤・制度を整備し、真のグローバル化を進め、質の高い国際流動性を実現▽オンラインを効果的に活用し、新たな形式での国際的な教育・交流活動の拡大や大学間連携を推進▽高等教育への足掛かりとなる高校段階からの国際交流、日本語教育機関の水準の維持向上――を挙げた。
取り組みの柱としては、①戦略的な外国人留学生の確保②産学官あげてのグローバル人材育成③大学等の真のグローバル化を進める基盤・ルールの整備――の3点。戦略的な外国人留学生の確保については、2013年に策定した「世界の成長を取り込むための外国人留学生の受入れ戦略」を見直す。工学、医療、社会科学(法制度)、農学の重点分野とASEANやアフリカといった重点地域の再設定を行う。加えて、ビジネス日本語教育やインターンシップなどを軸とする実践的な教育プログラムの推進や、プログラムに参加するための必要な支援の拡充を行い、外国人留学生の就職や企業支援を強化。また、日本の大学への継続的な留学や将来的な定着を見据え、高校段階からの外国人留学生の受け入れを積極的に促進し、受け入れ環境の整備を支援する。
産学官あげてのグローバル人材育成については、高校からの海外経験・留学の強化を進めるとともに、高校生や大学生など段階に応じた最適な留学支援・促進策の検討を通し、日本人学生の海外留学支援制度を強化する。さらに文科省が展開する官民協働の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」を発展させた事業を推進。企業や地方自治体の参画を促進することに加え、より若い時期の海外経験を将来の留学につなげるため、高校段階から留学の機運醸成・支援を強化する。
大学等の真のグローバル化を進める基盤・ルールの整備としては、外国人教員・留学生の受け入れ環境整備、国際化を担う専門人材の育成などに取り組む大学の改革を促進。加えて、3月にパイロット事業が開始された日本発のオンライン国際教育プラットフォーム「JV-Campus」のオンライン教育パッケージの開発・提供を促進。日本語や日本文化に関するプログラムなど、提供するコンテンツの充実を図る。
①戦略的な外国人留学生の確保
②産学官あげてのグローバル人材育成
③大学等の真のグローバル化を進める基盤・ルールの整備