東京都千代田区の共立女子中学高等学校(前田好子学校長、生徒1916人)でこのほど、夏期講座「18歳から大人 大人になった時に知っていたいお金の話」が3日間にわたって実施され、中学2年生から高校2年生まで46人の生徒が参加した。2日目は「株たす」などの体験型投資学習アプリを使って株の売買について学び、生徒からは「投資について無知だったが、アプリで体験することで、なんとなく仕組みが理解できた」と声が上がるなど、金融や経済の動きに関心が高まった様子だった。
同校の鈴野一高教諭(数学科)は昨年度から金融教育の特別講座を開設しており、この夏で4回目の開催となった。鈴野教諭はコロナ禍の中で株に興味を持ち、実際に自身でも株取引をしており、「投資については、体験してみないと分からないことがたくさんある。高校では今年度から新学習指導要領が施行され、金融教育がスタートしたが、実際に投資を体験している自分ならば、メリットもデメリットも伝えられるのではないか」と講座を開いたと話す。
授業は、株取引のデモトレードができる体験型投資学習アプリ「株たす」を使って進められた。同アプリは東証からリアルタイムで取得する本物の株価データを使用したチャートにより、限りなく本物に近い投資体験ができる。生徒らは1日目に同アプリで自分が選んで購入した株の値動きを確認。すると、株価が上がっている生徒と下がっている生徒が半々だった。
購入した株を売るか鈴野教諭が質問したが、生徒たちはどう判断すればよいのか分からない様子。そこで、鈴野教諭は「ファイザー社のワクチンが承認されるというニュースが、2020年12月13日に出た。その日を境に株価はどうなったか?」と一つの例を示し、生徒たちに考えさせた。「急上昇した」という意見の生徒が多かったが、実際にはその翌日に株価が大暴落したことが明かされ、驚きの声が上がった。
これはワクチンが承認されたことで利益が確定し、株を売りに出した人が多かったためだが、「一見、いいニュースでも株価が下がることもある。それまでのストーリーを知らないと、投資の素人は損をすることがある。人の心の動きを知ることは大事」と鈴野教諭が解説すると、生徒らは大きくうなずき、アプリ上で自分が購入した株を売るか、さらに買い足すかを改めて考えた。
またその後、FXや外貨預金、仮想通貨などについても学んだ。参加した中学生は「親が株をやっていて気になっていた。実際にアプリを通して体験してみると、株価の変動が激しく、損失が大きかった。感覚だけでやると良くないということも分かった」と感想を述べた。また、高校生は「株や円安のことなど、知らないことを学べて楽しかった。大学では経済学を学んでみようかと思う」と話した。
鈴野教諭は「将来の夢や目標を聞かれたときに、なりたい職業を答える生徒が多いが、今は労働所得を得ること以外にも、お金を稼ぐ選択肢はたくさんある。中高生のうちから少しずつ金融リテラシーを身に付け、『将来の夢=職業』だけでなく、人生の選択肢を増やしていってほしい」と期待を語った。