学校業務改善アドバイザーの妹尾昌俊氏や教育行財政が専門の末冨芳日本大学文理学部教授、学校現場の声を基に政策提言を行う「School Voice Project」が連携した「#教員不足をなくそう!緊急アクション」は8月17日、公開オンラインシンポジウムを開き、さいたま市の細田眞由美教育長と岐阜市の水川和彦教育長が、自治体の立場から教員不足の現状や対策を語った。細田教育長は「やれることは全部やろうの精神」と強調し、教員採用試験の工夫などの取り組みを紹介。水川教育長は「教員不足は施策を打てば打つほど深刻になる」と、苦しいやりくりの状況を訴えた。
緊急アクションでは6月に、副校長や教頭を対象に実施した調査結果を公表。今年度の始業式の時点で、小学校の21.0%、中学校の25.4%で教員不足が発生しているとし、文科省が初めて調べた昨年度の5月1日時点での「教師不足」の実態調査よりも悪化していると警鐘を鳴らしている。
シンポジウムに登壇した細田教育長と水川教育長はまず、さいたま市と岐阜市の教員不足の状況をそれぞれ説明した。
細田教育長によると、さいたま市では今年度、小学校で2人、中学校で3人の欠員が生じており、8月1日時点では、産休や育休の代替が確保できないなどの理由で小学校は19人、中学校は7人の教員が不足しているという。「これでも充足率は高い。全国的にトップレベルの自治体でもこういう状況だ」と細田教育長は強調した。
また岐阜市について、水川教育長は「4月1日時点で担任がいないという状態はなかったが、どうやって充足させたかと言えば、小学校は担任がいなければいけないので、中学校にいる加配教員を小学校に配置するということをやった」と説明。教員不足の要因の一つとして、「少人数学級をやれば、その分、担任が必要になる。教員不足は施策を打てば打つほど深刻になる」と述べ、国や自治体独自の教育施策で教員の加配などが行われることで、人材が枯渇してしまうパラドキシカルな状況を生んでいると指摘した。
続いて細田教育長が、政令市として独自に教員採用試験を実施しているさいたま市の取り組みを紹介。今年度実施した試験からは、民間企業の採用試験などに用いられている適性検査「SPI」だけで一次試験を受けられる特別選考を始めたことや、臨時的任用教員や民間企業で働いていた人を対象に、プレゼンテーションの内容で一次試験を評価するといった取り組み、細田教育長自ら全国各地の説明会に足を運び、トップセールスを行っていることなどを説明。「やれることは全部やろうの精神でやっている」と語った。
水川教育長は、岐阜市が全国に先駆けて始めた夏休み期間中の2週間にわたる学校閉庁日の設定や、ICTを活用した働き方改革の取り組みなどが成果を挙げていることをアピール。今後の学校現場への支援策として、「やがて定年延長が来る。役職定年なので校長は教諭になるが、30年かけて1人の教諭を校長にしていったのに、教諭に戻るのではマンパワーとしてもったいない。校長経験者に『担任として頑張って』ではなく、キャリアに応じた生かし方があるのではないか。若い先生の指導をしたり、学校経営のアシスタントをしたり、そういう強みを生かせるようにすることが必要だ」と提案した。